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第136話 新居 (※)

 二人の新居は、青い三角屋根に赤煉瓦、白い木枠の出窓が可愛らしい小さめの一軒家だ。  ジールから莫大な報奨金をもらったので、本当はもっと立派な屋敷にすることもできた。だがレリエルの羽の秘密もあり使用人を雇うつもりはなかったので、管理しやすい規模の家にした。  大きなベッドを買って、二人は毎日、共に寝ている。遺伝子注入……もとい、エッチも勿論、している。 「いつまで眺めてるんだよっ……」  困った声音で、レリエルは言った。  その体は全裸で、うつ伏せになってベッドのシーツに寝そべっている。  恥ずかしそうに背中の小さな羽を震わせながら。  同じく全裸のアレスに、先ほどからじっと背中を見つめられている。 「可愛い羽、可愛い尻、本当にレリエルは、可愛いな……」  しみじみと呟きながら、アレスは小ぶりな尻を撫で触り、小さな羽を指でもむ。 「はうっ……」  感じやすいレリエルは、それだけで甘い声を漏らしてしまう。今度は羽と尻たぶの両方にキスの雨が降って来た。 「や……っ、あっ、ふあぁ……っ」  触れるだけのキスの感触は、もどかしいくせに深い官能を呼ぶ。レリエルは白い後ろ姿全体をくねくねとさせて、内側が疼く感覚に悶える。  アレスはくねるレリエルを、視姦するようにじっくり眺める。  アレスの舌が、背中の真ん中をツーっと通り過ぎた。  今度は羽と尻をわざと避けるようにして、ぬめぬめと首筋や背中を濡らされる。その舌は感じる部位には決して触れない。  あまりのもどかしさに、レリエルはシーツを掴んでシワにする。 「やだ、やだ、もうそれやだぁ……」  アレスが耳に囁く。 「じゃあ、どうして欲しい?」 「わ、わかんな……」 「わかんないのか?」  アレスが手をシーツとレリエルの腹這いの胸の間に差し入れた。乳首には触れず、胸を揉むようにさすられる。  散々いじられ、開発されてしまっている乳首は、アレスに触られることを期待して勝手に尖り、疼き出す。  でもいつまでたっても、尖ってしまった二つの粒にアレスは触ってくれない。  レリエルは涙で目尻を濡らす。 「アレスの馬鹿!もうやだぁぁ……!」  アレスがくつくつとおかしそうに笑った。 「もうずっと、焦らしてたいな」  言いながらも、アレスは二つの粒をようやくつまむ。引っ張って、爪で弾き、指で潰す。 「んっ、ふうっっ……」  やっと強制的に焚き付けられた疼きが解消され、レリエルは艶めく吐息を漏らす。  アレスは情欲を瞳に灯らせ、レリエルの腹を持ち上げた。レリエルは膝をつき、後ろに尻を突き出す形にさせられる。 「やっ、は、恥ずかし……」  アレスの手が尻たぶをぐっと割り開く。端正な顔が、双丘の谷間へと埋められた。  ひくひくと紅く熟れる蕾を、アレスの舌がつつく。 「ひあぁ……っ、はあっ……、んっう」  レリエルの体は、人間の男を受け入れるための特殊な潤滑液を内部から生成する。穴からどろりと粘液が垂れるのが自分で分かり、いたたまれなくなる。アレスの舌がべっとりと舐めて淫らな粘液を掬いあげていく。  レリエルは恥ずかしくてたまらなかったが、でももう、この行為が「愛撫」だと知っている。アレスが自分を愛しているから、するのだと。  だから恥ずかしさに耐えながら言う。 「あ……っ、はあ……っ、はぁっ……!アレス、好き……。アレスが大好き……」 「……っ」  レリエルの言葉に煽られたのか、アレスの舌遣いが一層激しくなる。蕾を唇で覆い、尖らせた舌を突いては抜く。レリエルは肉襞を舐められる感覚にびくびくと身を震わせた。 「ひあっ、あん、や、あっ、あっ、やああああっ!」  ようやくどろどろのそこを解放すると、荒い息をつきながら言った。 「相変わらず甘くて花の蜜みたいだ。可愛いレリエル、お前の全てを食べてしまいたい」 「あぅ……」  ストレートな睦言に耳まで赤くなり、レリエルは返す言葉が見つからない。  アレスはレリエルを仰向けにひっくり返し、今度は前で立ち上がる小さな茎に食らいつく。袋まで全てすっぽりと口の中に収められた。  アレスの口の中を排尿器官で感じる恥ずかしさ。アレスの舌は陰茎に絡みつくように蠢いた。レリエルは手の甲で口元を抑えて、羞恥と快感に耐える。 「んっ、ふっ、ふぅ……っ」  小さなペニスを舌で愛撫しながら、長い中指を蕾の中へと沈めて来る。弱い部分をくにくにと押され、レリエルは早くも絶頂を迎えそうになる。 「やぁ……!待っ、イ、イっちゃうぅ……」  「イク」という言葉はアレスに教わった。溢れる蜜の中、指を二本に増やされる。二つの指が同じ箇所を交互に叩く。その刺激に脳天まで痺れる。 「だめっ!ほん……とに、イっ、あっ、あっ、イク、やああっ」  アレスがこらえきれなくなったように、ずるりと指を引き抜いた。名残惜しそうにレリエルの若茎を舌でひと舐めしてから、レリエルの体に覆いかぶさる。  熱い視線で上からレリエルを見つめ、 「じゃあ、一緒にイクか……」  レリエルは潤んだ目でアレスの視線を受け止め、うなずいた。  細い脚の間に、アレスの逞しい腰が割って入る。疼く場所に灼熱をあてがわれた。  硬く張り詰めたものが押し込まれる。レリエルは込み上げる気持ちを口に出した。 「遺伝子いっぱい出して……!身体の中、アレスでいっぱいにして……」  アレスは目を細めた。 「ああ、俺の全部をお前にやるよ……。お前だけに」  以前は遺伝子という言葉を使うとなぜか嫌そうにしていたアレスだが、最近はレリエルがその単語を口にしても嫌がらない。むしろ嬉しそうにしてくれて、レリエルは幸せな気持ちになる。  深みにまで侵入され、レリエルの全身の細胞が歓喜の声を上げる。つい、早く精を絞り出そうと自然に締め上げ、蠕動を始める不埒な肉体。  アレスが気持ちよさそうに眉根を寄せ、その体を傾けてレリエルに口付けてくれる。  愛撫するようにキスしながら、アレスの腰が甘やかに動く。レリエルの身体も波を打つ。  口と体、両方を繋げ、蕩けるような快感の中でレリエルは実感する。  ——これは愛の行為。  二つの肉体が一つに重なり、二つの遺伝子が一つに混ざり、二つの魂が一つに溶け合う。  これはとても素敵な、とても大事な、愛の行為。  愛の儀式。 「愛してる、レリエル」  アレスはいつものように、口付けの合間に愛を囁く。レリエルはそれが幸せで仕方ない。  のしかかるアレスの逞しい肉体が、揺さぶりの速度を上げる。 「あっ、あっ、あぁぁっ……!アレス、好き、好き、好き……っ!」  アレスにしがみつき、愛を全身で感じながら、絶頂を迎える。同時にアレスの精がレリエルの中に放たれる。  それはレリエルの体を駆け巡り、レリエルに至上の喜びを教えてくれる。  アレスに生かされる喜びと、アレスに愛される喜びを。   ※※※  事後の心地よい気だるさの中、アレスはベッドの中でレリエルを腕にすっぽりとおさめながらつぶやく。 「やっぱり俺、レリエルとちゃんと結婚したい」  レリエルはアレスの腕枕にもたれて、不思議そうな顔をする。 「ケッコン、てのは二人がフーフになって僕がアレスのヨメになるってことなんだろう?もう僕はアレスのヨメなんじゃ、ないのか?」 「う、うーん、もちろん今だって夫婦だしレリエルは俺の嫁なんだけど。もっとこう、みんなに認められてる、本物の結婚をしたいんだよ」 「本物の……?」 「『なんでも出来る』って言ってたなぁ、あの人……」 「あの人?」  首をかしげるレリエルにアレスは微笑み、額に音立てて接吻をした。 ※※※

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