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第1話

おぎゃぁ おぎゃぁ 病室に轟く新しい家族の声を、けして忘れることはないだろう 母の腕の中で泣きじゃくる姿すらも可愛くて、触ってみたかったけど父が、次は俺だと大人げなく桜を抱き上げるから、手が届かなかった。 普段から大人しくあまり会話もしない父が、顔をくしゃくしゃにしながら歓び、パパでちゅよぉなどと騒いでいる。 そんな姿を見て、少しむすっとしたがそんな父が新鮮でくすっと笑ってしまう。 「ほら、お父さん。春にも抱かせてあげて」 「あ、あぁすまんすまん、ほら春樹赤ちゃんだからなそーとだぞ、そーっと」 「えっ」 抱きたかったが、いざとなると赤ちゃんに触れるのが初めてだったので、怖じ気づいてしまう。ちらっと母を見ると、母は微笑んで父から桜を取り上げる。 「お母さん抱っこしておくから、触れてみなさい」 僕はそっと、ふっくらしているほっぺを指で撫でる。 予想通りそこはもちりとしていて、普段触り慣れている自分の肌との明確な違いに溜息が出た。 「ん、ぅんぅう」 すると桜がまたぐずりだして、咄嗟に指を離す 「あはは、大丈夫よ。春、お母さんが支えるから抱っこして名前呼んであげて。桜って」 こくりと頷き、母の隣に腰かける。 慎重に母に言われた通りに抱き上げる、ずしりとした重さと暖かさでより緊張が増した声で名前を呼んだ。 「さ、桜」 すると桜はくりんとした黒目を開いてじーと目があった。 「桜、桜!...可愛い、桜 お兄ちゃんだよ。」 何回も自分の中に刻むように、何回もその名前を呼ぶ。 父も母も、僕も皆小さな桜を囲んで新しい命を歓迎していた。

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