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第34話

神崎さんに言われるがまま付いていく。 緊張で心臓は口から出そうな程脈打っていて、目眩までしてきそうだった 先の部屋からそう離れていない距離に重厚な鉄扉が構えられた部屋があった。 扉には輪っかのようなものが取っ手とは別に中央の位置に取り付けられていて、神崎さんがそれを3回扉に打ち付ける すると少しして鉄扉の脇に取り付けられていたスピーカーから、凛としたの声が聞こえてきた。 「入っておいでハル、神崎お前は下がれ」 どこかにカメラがあるのかな、それよりも僕だけがこの部屋に入ることに体が強張る 神崎さんをちらりと見るけど彼は重たい扉を開け、ただ僕が入っていくのを待っていた。 そしてその先に 天蓋付きのベッドを背後に待っている才加様の姿があった。 一先ず深呼吸をして、浮かない気持ちを必死に押し込め足を進めた。 ハルが部屋に入ると扉はすぐに閉じられ才加と二人きりになってしまう 僕はどうしたら… 「緊張しているの?」 うつむいているとずいっと彼の顔が視界に入ってきた 「あ…」 びっくりして一歩後ろに下がってしまった、どうしよう…怒られる 「あ・・・、も、もうしわけ」 「あー、顔面蒼白じゃない。ごめんね?!怖いよね」 そういって僕の両手を彼の大きな手で包まれる。 「今までのことも君に謝りたいんだ、僕はこの家に生まれてしまったから仕方なくあんなことをしているだけで、本当はね?嫌なんだよ…言っても納得してもらえるなんて思っていないけど、でもね、だからこそ君を幸せにしたいんだ」 暖かい、こうしていると僕達を散々苦しめている原因を作っている人には見えない けど、彼の言葉をどこまで信用していいのかな。 ううん、疑っていいのかな。 この人は疑ったら僕を見捨てるかもしれない、今は言うとおりにしてるほうがいいのかもしれない 「いえ、あのちょっとビックリしてしまっただけで」 「そう?なら良いんだ」 彼はわかりやすくほっと息をついて、そして軽々しく僕を抱きかかえた 「いっぱい楽しもうね」 そうして数歩担がれたあと僕の体はベッドに沈み込んだ。 ベッドはふかふかだ、体が沈んでたちまち居心地の良さを感じる。 全身が包まれてるみたい。 ベッドに転がったハルを閉じ込めるように軽く覆いかぶさる才加様は楽しそうに僕を眺めている 「良いでしょこのベッド、僕専用なんだ特別にハルも好きな時に来て使っていいよ」 「えっ?」 「君だけは特別だからね、なんでって聞いて?」 「何でですか?」 「好き…だからだよ。この世界にいるとね黒いものばかり見てしまうから、綺麗なものだけを映していたいんだ、休みの時くらいはね」 そういって、やさしく頬を包み込んでくる手が凄く心地いい。 あの地獄のような時間から一変して幸せに縋れるこの時間に自分の心が緩んでしまっている 嘘でも、愛してもらえるのなら 「ありがとうございます。このような僕を」 すりっと心地よさに浸るように手のひらに頬をすり寄せる 「もう…可愛いなぁ」 ぎゅっとしがみついてくる才加様の体温が僕を包み込んで体がじわりと温かくなっていく 「いっぱい、イイことしようね」 額にキスを落としながら蜂蜜のような甘い声で囁かれ、いいように扱われても良いなんて考えてしまっている。 駄目だとわかっているのに、あの地獄のような場所に放りだされる位だったら何倍もマシだ 「…はい」

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