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第14話 今日から高校生!?
陽樹が聞くと、叔父は首を振った。
「生徒達が、自主的に言わないことを決めたらしい。将来は親の後を継ぐ生徒も多いし、政治や司法の道に進みたい生徒もいる。変な子供だと分かって、エリートコースから外されるのが怖いんだと思う。医者に行くのも皆拒んでいて。とうとう生徒から教師に連盟が出されて、箝口令が敷かれたんだ」
「生徒達も、周りに知られることを怖がっているんですね」
「意識して使わなきゃ、なんともないし」
「生徒だけが不思議な力を使えるんですか。理事長は何ともありませんか」
「私はな、なん、なんともないよ!」
こういうことだ。不思議な力を持っていることを、人に知られるのは、これからの人生や人間関係に影響を与える程のことなのだと、陽樹は叔父が心底可哀想になった。
「お体がなんともなくて良かったです。他の先生はどうでしょうか」
「なんにも無いです。だから生徒を強く注意できなくて」
「外で騒ぎを見かけたのですが、止めに入るのは風紀委員会の役割だとか?」
「警察みたいな役割を持っているんだ。パトロールしたり、規則を破った生徒を教師に報告するのが仕事。上がってきた報告で生徒の処分を決めるのは教師や、最終決定は私だけど、反対したら生徒達の親に圧力を掛けられるから、ほとんど生徒会のいうことを聞くだけだよ。生徒会の親が特に偉い人なんだ」
「モンスターペアレントじゃん」
陽樹が小さい頃、しきりにテレビで話題になっていた。学校で子供が少しでも嫌な思いをすると、過剰に教師を責める親のことだ。ただこの学園の場合は、大臣が警察の上層部に圧力を掛ける刑事ドラマのワンシーンに近いかもしれない。
「五月はどんな行事がありましたか」
「特になにも無かったと思う。四月に大体の新学期の行事が終わって、あー部活動や委員会が始まる時期だけど。でもトラブルは特に。そのときは、新しい生徒会が決まって」
「俺たちは不思議な力をなくす方法を探せばいいのか、それとも不思議な力を持って不安に思っている生徒たちの相談に乗ればいいのか」
「さっきの副会長は凄く疲れた様子だったね」
「生徒達が変な力を使うようになってから、教師や私に全く報告が上がってこなくなったんだ。完全に校内政治が生徒に乗っ取られてしまったというか」
「もう学校が乗っ取られてないか」
「陽樹! なんとかして変な力を鎮めてくれ」
叔父に肩を掴まれる陽樹。困ってしまう。
「いやっ、無理だろ。もっと……力を持っていながら、生徒たちが心地よく生活できるようにするとか」
根本から正すより、現状を改善する方が早いだろうと陽樹は思う。
「寮は貸すから! あと、もう先生たちには編入生が二人来るって話してあるから」
「はっ?」
「えっ僕たち生徒?」
陽樹は叔父の胸ぐらに掴みかかった。
「ふざけるなよ、こんなことになっているなら瀬那を巻き込んだりしなかった」
「陽樹……。ありがとう陽樹。だけど、生徒たちが困っているのは本当のことだよ。不思議なことが起きて話がややこしくなっているけど、生徒の相談に乗るのは、僕たちの役目じゃないかな」
「相談に乗るだけ。生徒の振りはしないからな」
「生徒のフリをして潜入しないと、外から来た人には教えてくれないと思うよ。理事長から話を聞く限り」
瀬那が学校に潜入する方向で話を進めるものだから、叔父が目に光りを輝かせている。
「でも寮には泊まらないから。瀬那は家に帰らないといけないの」
「合い鍵があるから大丈夫だよ。毎回来るの大変でしょ。乗りかかった船だよ?」
「もしかして瀬那、ファンタジーとかオカルト好きなのか」
「ファンタジーが好き。って、そういう話しじゃなくて。僕の心配はしなくていいよってこと。生徒たちのことを一番に考えよう?」
「いや生徒のフリをするって、俺たち19歳だぞ。無理が……」
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