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9 手の甲の痛み

お洒落なカフェ風になっている学食に着き、4人とも日替わりランチにすることにして注文を終える。 拓馬と佑が隣同士、拓馬の前に歩、その隣に和樹という配置で席に着いた。 料理が運ばれて来るのを待っている間、佑は黙ったままでぼうっと何処かを見つめている。 先程の苦しそうな様子は無くなっているが、何処と無く表情は暗く、じっと何かを考えているようにも見える。 拓馬はそれに気付いていて、敢えて触れずにそっと様子を伺っているようだ。 歩と話をしていた和樹は、どうしても放っておく訳にはいられず、佑に声を掛けた。 「佑」 「ん…あ、ごめん、何?」 「…具合でも悪いのか?」 「いや、そんなんじゃないから、大丈夫。さっきはごめんな」 困ったようにへらりと笑う佑。 何も無い訳では無さそうだが、貼りつけたような笑顔の裏に本心を隠してしまっているよう似も見えた。 この様子からして事情を話してくれそうには無いと思い、和樹はもやもやとした思いを抱えたまま、そうか、とそれ以上突っ込んで訊くことはしなかった。 そのうちに注文していた料理が運ばれてきて、佑も少し表情が和らいだようにも見える。 「ちょっと俺、トイレ行ってくるね」 「おー、いってら」 暫くして佑が席を外し、和樹は拓馬なら何か分かるのではないかと声を掛けた。 「あの、拓馬」 「んー?」 「佑のことなんだけど。大丈夫か?あいつ」 「あー…うん。いや、あいつも色々あんのよ。そのうち自分から話すつもりだと思うし、一緒に過ごしてたら何となく分かると思うから気にしないでやって?」 拓馬に聞いてみても、はっきりしたことは教えて貰えなかった。 只、手を払った後の苦しそうな表情が忘れられなくて、その痛みがまだ手の甲に残っているような気さえする。 何があったのだろう、何がいけなかったのだろうと、分からない問いに頭を悩ませた。 「あ、でも」 拓馬はふと思い出したように付け加えた。 「佑はスキンシップとか触られるのが凄く苦手でさ。過度なのは見るのも苦手なんだと思うから…そこだけは気をつけてやって欲しいかな」 「あ。じゃあさっきの俺の握手もそういうことか」 「そ。手を握るのが苦手だっただけだから。歩やカズが嫌だとかそんなんじゃないから安心して」 「ああ、分かった」 拓馬の話を聞いて、ほんの少しだけ佑が分かったような気がした。 席に戻ってきた佑は、少し遠慮がちではあるが笑顔も戻るようになっていた。 明日からも学校で会うんだから、これから知っていけばいい。 和樹はそう思い直し、4人での昼食を終えて解散することにした。

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