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30 結末
普段から一緒に食事を作ったり食べたりしていた経験もあり、4人での料理の連携は手慣れたものだった。
佑と歩が食材を切ってカレーを作っている間に、拓馬と和樹でほうれん草や人参など、葉物野菜を使った副菜を作る。
夕飯の準備はあっという間に終わり、味も上出来で4人ともおかわりまでして満足のいく食事を終えた。
夕飯を終え、和樹と歩で皿の後片付けをしていると、歩がこっそり耳打ちをしてくる。
「カズ、皿洗いが終わったら、俺やるからね」
「本当にやるのか?」
「当たり前じゃん。グズグズしてると、誰かに取られちゃうよ?」
「…それって、どういうーーー」
「カズ、歩、そっちの片づけ終わった?」
和樹が歩の言葉の意味を尋ねようとしたとき、丁度残っていた食材の片付けと風呂掃除を終えた佑が和樹の後ろから歩いて来る。
歩は和樹の陰から不意に佑の腕を引くと、自分の腕の中に抱き竦めた。
「ねぇ佑、教えてよ。君に昔何があったの?どうしてそんなに人に触れるのを避けてるの?」
最初は何が起こったのか把握できないといった風にぼうっとしていた佑の顔から、さっと血の気が引いたのが分かった。
歩の話を先に聞いていた和樹も、歩の予想外の行動に面食らう。
歩がやろうとしていたのは、ただ佑の身体に触れてみるということではなかったのか。
佑を抱き締めるなんて…そこまでやるなんて聞いていない。
「…いや………歩…はな、して…っ」
真っ青な顔でかろうじて搾りだした佑の声は、今までに聞いたことがないくらいに恐怖で震えていた。
それを見て、和樹はとんでもない事態を引き起こしてしまったのだと理解する。
「馬鹿、離せ歩っ!!」
歩の肩を掴み、引き離そうと和樹が叫んだのとほぼ同時に、ふっと糸が切れたかのように佑は意識を手放し、膝から床に崩れ落ちた。
「…う、わっ!?」
歩は佑に押し倒される格好で、一緒に床に倒れてしまう。
「おい佑!しっかりしろ!!」
和樹が佑の肩を揺すって必死に名前を呼ぶが反応はない。
歩はぐったりとしたまま動かない佑の真っ青で血の気の無い顔を見た途端、自分が取り返しのつかない事をしてしまったことを察した。
「カズ…どうしよ、俺っ」
「取り敢えず拓馬探して呼んで来い!あいつだったら何か分かるかもしれないだろ!」
「う…うん!」
拓馬は翌日に使わない余った食材と、炊飯器を返却するために管理棟へと出ていたところだった。
慌ててコテージを駆け出して行く歩を見送ると、和樹は佑の華奢な身体を抱き上げて2階の寝室へと運んだ。
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