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第71話

「あら、そうなのね」 「驚かない?俺、つまりそういうことなんだけど」  母には、自分がゲイだとまだカミングアウトしていない。何せ、自分が気付いたのでさえ最近だから。 「まぁ、多少は驚いたけど、真那人は真那人でしょ?私は、あなたの人生を思う存分に生きて欲しいのよ」 「母さん……俺も、その……ゲイだって最近気付いたからさ」  こういうことを告白するのは、物凄く勇気がいる。何とも恥ずかしくて、顔が赤くなってしまう。  周防がそっと、背中をポンポンと優しく叩いてくれた。まるで宥めてくれるように。 「そうだったのね。私はそんなの気にしないわ」 「え、ホント?」  真那人にとっては、意外だった。母親がどんな反応を見せるか不安だったのだ。 細かなことは気にしない母親だが、もしかしたら気持ち悪がられたり拒絶されたりするかもという思いも、捨てきれなかったから。 「真那人がそういう人を連れてきてくれて凄く嬉しいのよ」 「ありがとう。俺も安心した」 「ううん。あなたが幸せなら、それが1番でしょ」  母親の言葉が身に染みる。全力で、幸せになろうと真那人は心に決めた。 「あぁ、そうだな」 「周防さんでしたっけ。この子を、真那人をどうぞよろしくお願いしますね」 「こちらこそ、よろしくお願いします」  周防はソファーに座った状態で、膝に拳を置いて頭を下げた。  なんだか、結婚の申し込みをしに来てくれたみたいだと真那人は思ってしまい、照れくさい。  その後は三人で鍋を囲んだ。和やかな時間が流れ、周防はすっかり母親とも打ち解けている。 「しかし、周防さんも男前よねぇ。真那人もピカ一だけど、良い男の人捕まえたのね、あなた」  母親は随分酔ったようだ。珍しく真那人に絡んでくる。 「な、何言ってんだよ……やめろって」  真那人も酒の酔いに増して顔を赤くした。 「僕なんて大したことないですよ」  周防は笑って謙遜するが、母親は譲らない。 「あらいいじゃない。本当のことを言っただけよ?あなたたちはお似合いのカップルだわ」 「母さん……」  恥ずかしいけれど、そう言われて嬉しかった。  KSグループを継ぐために日々頑張っているし、それなりに自分も成長できていると思っている。 父親も、きっともう結婚だなんだと言ってこないだろう。  これからは、周防が隣にいるだけで強くいられる。  周防さえいてくれれば、前を向いて歩いていける。 -Fin-

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