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優しい腕の中で 3

 俺はビクビクと大袈裟なほど身体を震わせて達した。二回も欲を吐き出したおかげで、ヒートの熱は幾分かましになったようだ。でも、目の前で俺を導いてくれた成界の顔を見るのが怖かった。 (呆れられたら、どうしよう。) 「……嘉月先生?」  呼ばれたので反射的に顔を上げてしまう。けれども俺の頭を優しく撫でたままの成界は、穏やかに微笑んでいた。 「どうして、呆れないの……?」 「……呆れる?あなたは、可愛いですよ。」  成界は生真面目に応えると、彼の熱くなったペニスを再び俺の腰に押し付けた。ジワッと自身の後孔からも、僅かに愛液が滲み出てきたようだった。もう、ローションと混ざって何が何だか分からないけれども。 「ンッ、あ……きて、いいよ?」  俺は身体を捻って四つん這いになると、少しだけ腰を浮かせた。それから、自身の指で後孔を押し広げて彼の前に晒した。それだけでも恥ずかしすぎて、顔は枕に埋める。成界の大きなものが自分を貫くことを想像したら、トロッと後孔に入っていたローションが溢れ出し、内股を伝った。 「あっ、はずかしい……」 「……とても、可愛くて、俺もどうにかなりそうです。」  バサッと何かが落ちる音がした。恐らく彼も、着ていた服を脱いだのだろう。だって、背後から抱きついてきたその身体が、自分と同じくらい熱くなっていて泣きそうになるくらい嬉しかったから。 「もう、もっ……いれてぇ」 「大丈夫、ここまできて抱かないなんてこと、ありませんから。」  ゆるゆるとお尻の間を彼のペニスが行き来するが、すぐには入ってこない。我慢ができなくなって後ろを見たら、彼はスキンを取り出していた。 「あ、だめ、つけないで、そのまま、いい」  袋を切ろうとした成界の手を止める。 「それだと、嘉月先生の負担が」 「いや、いやだ、いやだぁ……」  至極まともなことを言う彼に、駄々をこねる子どものように首を振ると、彼は分かりましたと笑った。それから俺の内股からだらだらと流れるローションと愛液が混ざったものを指で掬うい、そのまま後孔に押し戻した。 「ヒッ、う、アンッ」  少し大きな声を上げてしまったと俺が羞恥に襲われているところに、ズンと大きくて熱い彼のペニスが奥まで挿入ってきた。 「アァッ!」 「はぁ、きつい」  彼も俺の身体で感じてくれているようで、涙が滲んだ。こんな風に誰かと心まで繋いだセックスを、俺は知らなかった。こんなの俺が知っているセックスじゃない。セックスはもっと一方的で、もっと痛くて、もっと怖いものだった。こんなの知らない。 「ん、ん、あ、あぁ、あ、あ、んぅ……」  ゆっくりと入り口のところまで引き抜かれて、浅く突かれる緩やかな快感に、身体から力が抜けた時、奥まで一気に貫かれる。単に激しすぎたり、痛みだけの行為しか知らなかった俺は、成界から与えられる快楽にすぐに翻弄されてしまった。 「あっ、イっちゃう……また、イっちゃうよぉ……」  これから襲ってくるであろう、とんでもない快楽に備えて、ぎりっとシーツを握りしめる力を強くしたら、くるりと身体を反転させられた。目の前に余裕を無くした成界の顔が映り、行き場を失い彷徨っていた両腕は、無意識に彼の背中へとまわっていた。 「俺も、もう限界です。」  深く深く口付けられたまま、更に奥を一際強く突き上げられて、目の前が真っ白になる。自分のものからドクッと精液が出た感覚を知るのと同時に、お腹の中が暖かくなった。  中に出してもらえた安心感に浸りながら、俺はゆっくりと意識を手放した。

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