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優しい腕の中で 2

「て、つめたいね……」  蜂蜜色の瞳が蕩けかせながら、嘉月先生は言った。既に前のボタンを全て外したワイシャツを羽織っただけの嘉月先生は、自身の中に溜まる熱を冷まそうと俺の手のひらに身体を押し付けてくる。そんな痴態に煽られて、深く口付けをすれば、拙く舌が絡め取られた。俺の口の中で小さな舌が懸命にちろちろ動いている気がする。 「フフッ。可愛い。」  一度離れて嘉月先生の頬を撫でると、もっとと言うように控え目に口を開き少しだけ舌の先を覗かせた。 「フッ、ん、んっ……」  彼の確かな期待に応えるため、覗いた舌先を軽く吸い上げて、そのまま温かい口内へと侵入する。裏筋を柔らかく擽れば、あえかな喘ぎを漏らして身体を震わせた。舌を絡めたまま、冷たいと言われた自身の手を彼の真っ白な肌の上を滑らせる。特に脇腹や内股をゆっくり愛撫すると背をのけざらせる程、感じるようだった。 「ハァ、あぁ、も、もう、イっちゃう」 「ん、一度出しておきましょう。」  まだ一度も触れたことのなかった彼の小さなペニスを、ゆるゆると擦って射精を促す。どうしても、目の前に広がる華奢な躯体は、激しくするとすぐに壊れてしまいそうな儚さがあったので、なるべく優しく丁寧にを心がけた。 「ん、ん、やぁ……もっと、つよく、してぇ……」  けれどもペニスへの直接的な刺激が弱かった分、内側の熱は余計に溜まってしまったのか、泣きながら腰を揺する彼に心がひりついた。だって、泣かせるくらい焦らすつもりはなかったから。 「ごめんなさい。」 「ううん、だい、じょぶ、だから……もっとシて?」  彼は顔を真っ赤にさせて微笑んだ。ギュッと握る力を強くして扱けば、ひときわ大きな声をあげてプシャっと精液が彼の下腹部を濡らす。確かめるようにそこを撫でれば、薄い色の精液が指に絡んだ。 「やぁ……は、はずかしいからぁ……」 「どうして?……俺も、もうこんなです。」  硬く上を向いた自身のものを、グッと彼の腹に押しつける。ピチャッと少し滲んだ俺の先走りと、彼がさっき吐き出した欲が混ざり合う卑猥な音が聞こえた。荒く呼吸をする彼を落ち着かせたくて、背中に腕を回して抱き寄せる。ハアッと深くため息を吐いた彼は、俺の肩口に顔を埋めた。 「それ、好きですよね。」 「へっ?」 「いつも、そうするから。」 「だって、におい、おちつくから……」  肩に顔を埋める理由が俺の匂い嗅ぐ為のものだとは知らなくて、思わず目を細めて笑ってしまった。彼は相変わらずぐりぐりと顔を押しつけているので、俺の緩みきった顔は見えていないのだろうが、何となく恥ずかしてくて抱きしめる力を強くした。 ◇◇◇  暫く背中を撫でていると、嘉月先生の呼吸が少しだけ穏やかになる。それでも俺のワイシャツを強く握り締めて、時折激しく押し寄せてくるヒートの波を耐えている。 「落ちついた?」 「うん」 「後ろ、触ってもいいですか?」 「うん」  このままではつらいだろうから、切なそうにヒクつく後孔に薬指を一本挿入する。しかし、中はあまり潤ってはいなかった。それもそうだろう。原因となったあの男を思い浮かべると腹が立ってきたので、頭の中から無理矢理追い出す。それからベッド脇のチェストの中に入っているローションを取り出した。 「……ごめんね、あんまりぬれなくって」 「あなたが、謝ることなんて何一つありませんから。だから、安心して俺に委ねて。」 「そうだね……ありがとう。」  ゆっくりと、小さな身体を再び押し倒して言えば、安心しきった顔でふにゃりと嘉月先生は笑った。その笑顔を合図に、俺はローションを満遍なく指に絡めて、嘉月先生の中へと慎重に指を挿入し直した。 「んぅ、ん、あ、あ、ぁあ、ん……」  入り口の所を浅く摩っただけでも、ヒートの身体は敏感に反応して俺の指を深く深く受け入れようと収縮する。その動きに合わせて、奥に指を挿し込むと少しだけ手触りの違う部分に辿り着いた。そこを入念に撫でると、嘉月先生の嬌声はさっきよりも大きくなる。 「アッ、いやぁ……いや、フッ、ん、んんっ」 「気持ち良くないですか?」  いやいやと首を振る嘉月先生に、意地悪をして訊ねれる。 「ん、ううん、ううん……きもちぃ、きもちいよぉ……」  普段より格段に素直になっている彼は、すぐにその快楽を認めた。 「あと一回、出しましょう。まだ、身体、落ち着かないでしょう?」 「うん、わかったぁ、あぁ、アッ、イく、イっちゃう……」  その時、一瞬だけ怯えたように揺らいだ嘉月先生の瞳を、俺は見逃せるはずもなかった。彼を左腕で抱っこして耳元で囁く。  あなたは、もう一人ではないから。一人きりで暗闇にいるような人ではないから。 「怖かったら、掴まって。俺は、ここにいます。」

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