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28.長いながい一日 18
そういえば温泉に行った時、修平が航に藤原さんを紹介したって話をしていたら東海林も言ってたっけ。
『……お前、よく紹介できたもんだな』
あの時は東海林が珍しく驚いた顔をしていたから、藤原さんっていったいどんな人なんだっていろんな想像をしたものだが、元カノだったからか……。
納得する反面、また新たな疑問が浮かぶ。
つか、そもそもあいつってそんなこと気にするタイプなのか?
それに、藤原さんの連絡先は知らないって言ってた。だから俺は藤原さんが滅多に連絡先とか教えない人なんだと思って、それでも修平には教えてたんだってぐるぐる考えてしまったわけだけど。
まさか別れたら番号とか思い出の品とか捨てるタイプとか?
……いやいや、それはないだろ。あの東海林だぞ。
そんな繊細なやつが、人の焦ったり困ったりする顔が好きなドSだとは思えない。
でも気になるし……、ついでにそれも聞いてみることにした。
「東海林って藤原さんの連絡先とか知らないって言ってたけど、付き合ってたなら番号くらい知ってるんじゃねーの? あいつ別れたからって消したりするようなタイプには見えないんだけど」
するとまた修平はあっさりと答えた。
「あー、別れた時に使ってたスマホ折られたらしいよ。データ復旧できなかったって言ってた」
「……はぁ? スマホ、折られた?」
「うん。藤原さんって小柄なんだけど武闘派だから」
いや、武闘派って関係なくね?
「別れたときの話とか詳しく聞いてないけど。まぁ十中八九、東海林が悪いだろうね」
もう次々に更新されていく藤原さん情報についていけない。
すると、修平はベッドの上を移動してもっと俺の近くに寄るように座り直した。
そして今度は俺の顔を覗き込みながら、そっと俺の頬に触れる。
「ねぇ、千秋。僕も聞きたいこと聞いてもいい?」
そう言ってくるから俺は “修平も聞きたいことあるのかー” くらいの軽い気持ちで頷いたんだけど。
「うん。何かあるのか?」
すると修平の顔がぐっと近づいてきた。
そして、鼻と鼻が触れそうになるくらいの距離で修平は俺の目を真っ直ぐに見つめ尋ねる。
その声はいつものように優しいけど、俺の頭に直接響くような声だった。
「公園でね、『もう航とキスなんかしない!』って言ったあれ……何?」
柔らかい笑顔で修平に聞かれた瞬間、俺が固まったのは言うまでもない。
今の今まですっかり忘れてたけど……、俺、口走っちゃいけないことを口走ってたみたい。
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