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28.長いながい一日 19

思わず目が泳いでしまって口籠ると、また修平が俺の顔を覗き込んだ。 「あ、あれは……」 「キス、したの?」 「ち、違う! それは航が勝手に……」 「へー。本当にキスしたんだ」 修平は俺の体に体重をかけると、ベッドに押し倒し俺のことを見下ろした。 ただならぬ雰囲気に飲まれそうになったけど、そんなの言うなら俺だって言ってやりたいことがあったのを思い出して、慌てて修平のシャツを掴む。 「そ、そんなこと言うお前だって、東海林のこと押し倒してただろ!?」 「いつ? そんなことするわけないだろ?」 修平はいつになく冷静な口調だけど、負けるもんか。 「温泉行ったときだよ! 俺はしっかり見たんだからなっ!」 それでも修平はピンと来ていなかったようだから、俺は温泉で見た2人のことを詳しく話した。 旅館に泊まった朝、東海林が修平を押し倒して、そのあと修平が逆に組み敷いてたこと。 その時、修平がすごく楽しそうに笑っていたこととか、……とにかく全部。 「……だから東海林は修平が好きなんだと思ったんだ。それに修平も満更じゃないように見えたし。だから……俺、……修平が東海林を…好きになったら…どうしようって……」 もじもじしながらブツブツ言ってると、修平は俺のことを見下ろしたままクスクスと笑い出した。 「笑ってんじゃねぇよ」 「フフフ……ごめん。僕ってそんなに信用ない?」 「そんなんじゃねぇけど」 修平は目を細め笑いながら俺の髪を優しくすいて、そのまま俺の頬を撫でた。 「だからそんなことで思い悩む必要なんてないのに」 「お、俺にとってはそんなことじゃなかったし……」 修平は優しく微笑むと、短いため息をついた。 「あれはね、藤原さん直伝の寝技の返し技だよ」 「寝技の返し技?」 なにそれ? って思っていると、修平は俺の髪を撫でながら続ける。 「彼女ね、実は柔道の有段者なんだけど。東海林と別れてすぐ位にね……」 修平が言うには半年ほど前。 学校から帰ろうとした修平は藤原さんに呼び止められたらしい。 そこで東海林と別れたことを聞かされたそうだ。 「それでね、藤原さんは前に東海林にせがまれて寝技を教えたことがあったんだって。東海林ことだからきっと面白がって僕に仕掛けるだろうから、返し技教えといてあげるって言われてね。その返し技を習うためにしばらく藤原さんの実家の道場に通ってたんだ」 「えっ! お前、そんなことしてたの?」 「そう。で、東海林は藤原さんの言った通り僕に寝技を仕掛けてきたってわけ」 「はぁ……」 まさか、それがあの時の真相ということなのだろうか?

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