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28.長いながい一日 20
俺がまだ少し険しい顔のまま聞いていると、修平はその日のことをゆっくりと説明し始めた。
「あの日、朝起きたら千秋たちいなかっただろ? 朝風呂でも行ったのかなと思ってたら東海林が起きてきてね。それから他愛ない話をしてたんだけど、思い出したように航くんに藤原さんを紹介するってどういうつもりだって言ってきたんだよ」
俺は修平の話をうんうんと頷きながら聞いていた。
「女の子の知り合いって藤原さんしかいないからって言ったら不服そうでね。そしたら東海林が僕に向かって性格悪いって言ったんだよ。東海林だけには言われたくないよね」
確かに東海林には言われたくないけど、客観的に見れば修平も似たようなものになるのかもって、ちょっとだけ思ったのは内緒なのだが……。
やっぱこいつらが友達なのってSっ気が合うからって推測、あながち間違いじゃないんじゃね!?
なんてことを考えながら修平の話の続きを聞いていた。
そして話は俺が見た例のシーンにさしかかる。
「そんな話をしていると東海林が、俺のことどう思ってるわけ? みたいなことを聞いてきたからさ、友達って答えたんだよね」
それは俺がずっと気になっていたフレーズだった。
『なぁ、新藤はさ。俺のことどう思ってるわけ?』ってやつ。
しかし、その真相は俺が思っていたような話ではなかったようで。
「そしたら突然寝技をかけられたんだよ! 東海林はタイミングを見計らっていたみたいだけどさ、藤原さんの言った通りかと思ったら急に可笑しくなってきて笑っちゃって。すぐに返し技かけたら、それがまた上手く決まっちゃってね。あの時の東海林の顔ったらなかったね」
修平はその状況を思い出したのかクスクス笑い出した。思い出してこれだけ笑っているわけだから、その時はもっと面白かったんだろう。
でも、柔道の寝技を組み敷いてるって思いこんでた俺って……。
いやいや、2人とも紛らわしかったし!
東海林の『俺のことどう思ってるわけ?』も、もっと乙女モードっぽく聞こえたはずだ!
だから、あれは絶対に間違えるって! と、一生懸命自分を正当化しようとしていたら、修平はその旅館での一件がよほど面白かったんだろう。思い出してはクスクスと笑いながら話を進めた。
「藤原さんの言ったとおりの展開が面白くて笑ってたら、さすがに東海林も誰が僕に返し技を教えたのかわかったみたいでね。ま、藤原さんのほうが一枚上手だったってことなんだけど。あれは面白かったな。傑作だった」
そう言うと修平は微笑んで俺に顔を近付けると優しく尋ねた。
「……で千秋にはこれが、僕が東海林を組み敷いてる話に聞こえる?」
いや……聞こえない。聞こえないけど。
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