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28.長いながい一日 21
「……勘違いしてた」
「僕と東海林とかありえないって言ったろ?」
「でも……」
そんな雰囲気に見えたんだって言おうとしたところで、修平が俺のことを抱き締めた。
そして耳元に息がかかったかと思えば優しい声が響く。
「でも不安にさせてしまったなら、ごめんね」
どうしてこうも修平は優しいんだろう。
また胸がぎゅーってなるじゃねぇか。
修平はこういうときにいつも先に謝って俺の心を軽くしてくれる。
だから俺も素直に疑ってしまったことを謝ろうと視線を上げた。
「俺も弱気になって、信じきれずに酷いこと言ってごめん」
「だから航くんとキスしたの?」
「だから、それは俺がしたんじゃなくて航が勝手に……」
俺が言い終わる前に深刻そうな修平の声が響いた。
「どうしてキスしたの?」
「……そ、それは」
「僕ね、昼過ぎに航くんに会ったんだよ。その時に千秋の居場所は知らないって言われたんだけど、関係ある?」
修平の声は低く響いたけど怒ってる風ではなさそうだった。
本当ならあまり言いたくないけど、嘘を付きたくもないので俺は航の家であったことを話すことにした。
体調が悪化して航の家で寝てたこと。
玉子酒で気を失ったこと。
キスされたこと。
告白されたこと。
「キス、どこにされた? 頬? 唇?」
そう聞かれて、どちらもですとか……とても言えない。
俺がモジモジしていると修平がまた囁くように俺に聞いた。
「口にされた? まさか、舌なんか入れられてないよね?」
ぼんやりした記憶ではあるが覚えているんだけど、舌、入れられたよな……。
でもその事実を言うべきか言わざるべきか、どうしたら良いかわからずにいると、修平はそれを肯定だと認識したらしい。
「航くん……許せない」
眉がピクッと動いて、今度は明らかに怒っている。
「ちょっと待て。あれにはワケが……」
だって俺は修平だと思ってたんだから。
そう言おうとしたとき、修平の顔がぐっと近くなった。
「関係ないね。僕の千秋なんだよ」
至近距離で見つめられてそんなこと言われたらいきなり心臓がバクバクし始めるし、固まっている俺に修平はゆっくりとキスを落としていった。
額に、髪に、まぶたに、頬に……そして唇にする直前で、止める…───。
「ねぇ、千秋。僕とキスしたい?」
キスしてくれるものだと思っていたから寸止めみたくなって、思わずキスしたいって衝動に顔が熱くなってしまった。
「航くんにも見せた? その顔」
そんなのわかんねぇよ。
でも、俺が今キスしたいのは修平しかいないんだ。
俺が少し目を逸らすとまた修平は無駄に色気のある声を俺の耳元で響かせたんだ。
「僕とキス……したい? ねぇ、ちゃんと言って」
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