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第1章 偶然はいたずら 1
「なぜだ! なぜだ! なぜなんだ!」
放課後を迎えた教室に俺の声が響きわたる。
「あー、また始まった。今度は誰に振られたんだよ?」
「…………マリエちゃん」
ガックリと肩を落とす俺、柏木 千秋 は絶賛失恋中。
「おいおい、高校入ってから何連敗してんだ?」
「クソッ! 6連敗だ! 悪いかっ!」
俺が叫ぶとあいつらは腹を抱えて笑いだした。
「柏木って顔が悪いわけじゃないのに何故かモテねぇな」
「がっつきすぎだからじゃね?」
なんだよみんなして他人事だと思って好き勝手言いやがって。
でも振られたことも相当ショックなのだが、それに上乗せされて悔しいこともあったわけで叫ばずにはいられなかった。
「でも、ムカつく! マリエちゃんまで新藤 の毒牙に!」
がっくりと肩を落としていると友達の1人が俺に尋ねながら励ますように肩を叩く。
「なんだ? また新藤が好きって言われたのか?」
「なんで、俺が好きになる女の子はみんな新藤のことが好きなんだよ!?」
「お前が好きな女の子だけじゃなく、新藤がモテるのは事実だろ」
認めたくはないけど。それも、事実だ。
俺が女の子に告白すると決まって「好きな人がいるの」という返事が帰ってくる。
しかもその相手は決まって同じクラスの新藤 修平 なのだ。
なんで、女子はあんな奴がいいんだ?
顔は……多少いいかも知んないけど、他が大したことないじゃん!
さっぱりわからねぇ。
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