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6.俺だけがいない 12
俺のことなんて気にも留めずに前だけを見て歩いていく新藤を、無意識に腕をつかんで引き寄せていた。
「おい、新藤! 待てよ! 呼んでるだろ!」
腕を引き寄せたので、新藤が俺のほうを向いた。
そして、久しぶりに目が合う。
でも、それでも新藤は何も言わない。
表情もなく、冷たい目で俺のことを見ている。
俺のイライラは更にに上昇していった。
どうして、そんな冷たい目で見るのかと思う。
そんな雰囲気を察したからだろうか、新藤はマリエちゃんに向かってニッコリと笑顔で言った。
「マリエちゃん、ちょっと待っててね」
なにが、マリエちゃんだよ。
名前で呼んでんじゃねぇよ。
俺の気も知らずに、マリエちゃんに笑いかけた新藤はまた無表情で俺の方を見て言った。
「何か用?」
そのトーンの落差に一瞬、怯みそうになったけど、呼び止めたからには言ってやらなきゃ!
でも、何も考えずに走ってきたから話題が浮かばねぇ。
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