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7.夕焼けは媚薬 2
俺は頭に血が上ると、突拍子もない行動をとるみたいで、また何の計画性もなく走って新藤の家へと向かった。
そして、新藤の家の前まで来てみて初めて考えるのだ。
勢いだけで来ちゃったけど、俺ってば何をやってるんだろう。
つか、マリエちゃんと帰ってるのに家にいるわけねぇじゃん。
いや……もしかして、2人で部屋にいるかも。
もしかして、最中だったり……。
そう思うと気分は重くなっていって、最初の勢いはどこへ行ってしまったのかと思う。
はぁ……。
ため息をつき、帰ろうと思った時、ガチャッと玄関のドアが開いた。
「あれ? 千秋くんじゃな~い」
出てきたのは新藤の姉さんだった。
「あ、お姉さん」
「修平に用事⁉︎ 修平なら部屋にいるよ~」
「え? 彼女と一緒に?」
「彼女? あの子、彼女なんていないと思うけど」
お姉さんはそう言いながら首をかしげ、すぐさま時計を見てヤバイと言いながら俺に向かって申し訳なさそうに手を合わせた。
「ごめん、千秋くん。ちょっと今、時間がなくて。修平に用事なら勝手に入ってくれていいから。あと、戸締りお願い!」
「え? と、戸締り?」
「もう時間がないの! だから中から鍵かけといて」
そう言って足早に俺の横をすり抜けていく。
「あの……っ」
「今度、一緒にご飯食べに行こうねぇ」
いやいやそうじゃなくて!
お姉さんは笑顔で手を振りながら走っていってしまったんだけど。
戸締りとか……なんで俺が。
でも、閉めとかないと泥棒にでも入られたらダメだしな。
それに、新藤に話したいこともあるし。
と、戸締りするだけだから……。
そう強く思いながら、ドアノブを握った。
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