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9.打ち震える鼓動 9
「俺は行かないと言ったんだぞ。なんでお前はわかっただけで済ませるんだ?」
「なんて言って欲しかったの?」
「そんなこと言えるか!」
すると新藤は頬杖をつきながら視線を流した。
「ちゃんと言えたら、望み通りに言ってあげるよ」
「はぁ!? それじゃ、意味ねぇんだよ」
新藤は「困った人だ」と言いながら、俺の隣にくっついて座りなおした。
そして、俺の目をじっと見る。
「じゃあ言い直すよ。用事があるなら仕方がない! 週末は僕も遊びに行くことにした」
……はぁ!? なんで、言い直してそれなんだよ!
しかし俺の悲痛な叫びなど何処吹く風で、新藤はにっこり笑うと満足した? とでも言いたげな笑顔を見せた。
なんでだよ! なんで、そうなるんだよ!
「おい! 新藤! ボケカスマヌケ! 意味わかんねぇよ。何だよ! どこに行くんだよ!!」
「どこにしようかな? 女の子がいっぱいいるところとか」
「はぁ?」
「だって千秋は用事があるんだろ?1人でいてもつまらないからね」
待て! 待て待て待て!
ちょっと待て!!
「用事があるなんて言ってないだろ?」
俺の言葉に不思議そうな顔をした新藤は首をかしげた。
「行けないってことは用事があると僕は受け取ったんだけど」
「行けない事は……ない」
「ふーん、じゃあ嘘をついたのか」
冷たく突き放すような新藤の声。
恐る恐る新藤の顔を見ると、視線もまた冷たく感じる。
まるで、あの無視されていたときのような……。
これって、非常にヤバイ状態なんじゃ。
そう思った俺はさっきまでの威勢の良さはどこへ行ったのか。
「嘘なんかじゃ……ない」
「じゃあ、わかるように説明してよ」
こんなはずじゃなかったのに。
時間が経てば経つほどに悪くなっていくような状況に、最終的には神頼みしかなくなってきた。
もう、コイツを試すようなことなんかしないから許してくれよ、神様。
それなのに。
「もう僕の家には来ないでね」
そう新藤に告げられた瞬間、胸が刺さるように痛くて。
どうしても元に戻したかった俺は、駆け引きなんかどうでもよくなって、気が付いたら新藤に叫ぶように言っていた。
「嫌だ。新藤の家に行きたい! お前が嫌がっても絶対に行く!!」
言い終わった後、俯いてぎゅっと拳を握りしめた。
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