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9.打ち震える鼓動 11
下に行くと、明らかに新藤の為に作った、普段とはかけ離れた豪華な料理がテーブルに並んでいた。
誕生日かよ! いや、誕生日でもここまで豪華じゃないか。
母さんにここまで機嫌よく料理を作らせるなんて。恐るべし、新藤修平!
そんな新藤は、母さんに促されて席に着き和やかに微笑んでいる。
「おいしそうですね」
「さぁ、新藤くん。たくさん食べてね。あれ? 首どうしたの?」
母さんのその言葉に俺だけが俺だけがガタガタと箸を落としたりして動揺しているが、新藤は涼しい顔をしたままだ。
「なんか凝ってしまって」
「そう、でもそれじゃ目立つわね。肌色タイプがあるからこっち貼りなさい」
つか、母さん! 余計なことすんじゃねぇよ!
俺は心の中で叫んでいた。あの湿布を剥がされては困るからだ。
でも、新藤が今ので大丈夫だと丁重に断っていたので、少しだけ安心する。
「今日、父さんは?」
「遅くなるらしいわよ」
そんな話をしていると、ガチャガチャと玄関先が賑やかになった。
きっとあいつらが帰ってきたんだろう。
「ただいま~」「おなかすいた」と言いながらダイニングに入ってきたのは、弟と妹で。
2人とも、新藤を見るなり固まる。
そして見事にハモりながら言った。
「かっこいい~。お兄ちゃんの友達ですか?」
「かっこいい~。兄ちゃんの友達ですか?」
「う、うん。そうだよ」と言う新藤は目を瞬かせていた。
「へぇ~。お兄ちゃんにこんなカッコいい友達がいたなんて意外」
「へぇ~。兄ちゃんにこんなカッコいい友達がいたなんて意外」
こんな長い台詞ですらハモって言ってしまう、こいつらは双子なのだ。
二卵性で性別も違うし、顔も似てないけど、考えていることが物凄く似ているのかよく同じことを同じタイミングで言ったりするのだ。
これには新藤も驚いたに違いない。フフン。
そんなこんなで、父さんを除いた家族と新藤で団欒的なものをしてしまったわけなのだけど。
それにしても、母さんといい、咲良 といい……新藤にデレデレしすぎだっつーの。
つか、男の樹 ですら憧れの眼差しだし……。
兄の威厳はどこへ。
つか、最初からそんなものがあったのだろうか。
ちょっと、お兄ちゃん寂しい。
そして和気あいあいとした一家団欒を終えて新藤が帰るというので玄関で見送ろうとしたら、母さんと双子になぜか怒られた。
なんでも、新藤が襲われたらどうする!って……。
んなわけねぇだろ!! というと、咲良に冷たい目で見られてしまうし。
「お兄ちゃんって冷たいんだね」
ってオイっ!! つか、見えてますか? こいつは男ですよ。
つか、俺よりも10センチ以上背もでけぇし。
180近くあるわけだし、こんな男を誰が襲うって言うんだよ。
そんな男を襲う奴をこいつよりチビの俺がどうにかできるか!
と、続けて叫びたかったのだが……これ以上、咲良ちゃんに幻滅されたくないです。
良いお兄ちゃんでいたいです。
だから、新藤を途中まで送っていくことにした。
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