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9.打ち震える鼓動 12

ハァ…───。 なので、みんなが見送る中……新藤を送ることになってしまい……。 トボトボ歩いていると新藤が申し訳なさそうに謝って来た。 「なんかごめんね。いいよ送らなくても」 「別にコンビニに用事があるからいいって」 俺達はしばらく何も言わずに歩いていた。 すると新藤が少し嬉しそうな感じでボソッと呟くように言った。 「なんか、家族団欒って感じいいね」 「そうか?」 「僕の家は両親とも留守がちだしね。最近は姉貴もあまり顔合わせないし」 「俺からしたら自由でいいような気がするけど」 「きっとお互いに無いものねだりかもしれないな」 ハハハっと乾いた新藤の笑いが響いた。 俺んちは昔からあんな感じだから、正直言って自由そうな新藤の生活は憧れでもあるけど、それはそれで寂しいものなのかもしれない。 「なぁ、お前が料理うまいのって親が忙しいのと関係してる?」 「うーん、どうだろう。一時期、俺と姉貴が交代で料理当番とかしてたからかな」 「姉ちゃんも料理上手いの!?」 「うん……って何? 姉貴のが食べたいわけ?」 「い、いやそんなんじゃねぇけど。料理できる女子ってモテるんだろうなって」 「さぁね」 コイツは俺が姉ちゃんの話をすると途端に機嫌が悪くなる。 俺と姉ちゃんがどうにかなるわけじゃないのは明らかな事なのに。 しばらく歩くと新藤が普段は通らない道を指差してこっちから帰りたいと言った。 別に俺はどこから帰っても良かったからその道を行くことにする。 すると、数歩歩いたところで街灯が壊れている部分にさしかかった。 そんなことはあまり気にせずに歩いていたんだけど、またボソッと新藤が呟くように言った。 「千秋……手、かして」 何かあるのかと思い、何も考えずに手を出すと新藤はその手をぎゅっと握ってくる。 「お、おい。何するんだよ」 「手をつないで歩きたくなったから」 「バカ! 誰かに見られたらどうするんだよ」 「暗いから見えないよ。例えばこんなことをしたって」 そう言うと、今度は俺のことを塀に押し付けて強引にキスをしてきた。 待て、待て、待て! そう叫びたいけど口が塞がっていて言葉にならない。 「……っ……ンッ……」 ゆっくりと新藤の唇が離れると、暗闇の中でも新藤がニヤリと笑っているのがわかった。 「ふざけんなよ。こんな外で」 「こんな時じゃないと外で千秋に触れられない」 「触れんでもいいんじゃあ!」 まだ心臓がバクバクいっている。 あんな不意打ちはマジで困る。 新藤はいつも俺が予想できない事ばかりするから、心臓がいくつあっても足りない。 「手をつないだのも初めて?」 「だったら悪いか!」 「いや、僕が最初で嬉しいよ」 涼しげに微笑む新藤を見て、やっぱり俺はどうやってもコイツに赤面させられる運命なのかもしれないと思った。

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