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10.溺れれば夢中 19
やっぱり俺は新藤の声も好きだ。
その声で囁かれるといつも堪らなく恥ずかしくなるけど、この心地よくて少しくすぐったい声が大好きだ。
でも、1つだけ気に入らないことがある。
「おい、新藤。俺がお前のっていうのがなんかムカつく。お前が俺のなんだ!!」
俺がそう言うと、新藤はなぜか噴出すようにして笑った。
「何が可笑しいんだよ!」
「だって、それはありえないから」
「なんでありえないんだよ!」
すると新藤は肩を震わせながらも、目が合うと妖艶に微笑んで、俺に内緒話でもするみたいに耳元で囁いたんだ。
「それはね、千秋が僕に抱かれているからだよ」
なっ、なんだとー!!
思わず顔が赤らんでしまったけど、すぐに振り払うようにかぶりを振る。
涼しい顔してそんなこと言いやがって! 本当に、いけ好かないやつめ!!
「黙れ、新藤。覚えてろよ! 絶対に、いつかお前のことを襲ってやる!」
「へぇー。そんなことを考えていたんだ?」
「いつまで余裕顔でいられるだろうな!」
「楽しみにしてるよ」
クスクスとまた余裕たっぷりの顔で微笑む新藤が憎たらしい。
だから俺はわざと新藤に背を向けたのに、こいつはまたすぐに俺のことを後ろから抱きすくめてくる。
こんな瞬間にも俺はどんどん新藤にハマってる。
最初は大嫌いだったのに、こんなにも好きになるなんて。
好きだって白旗あげて降参するのは、まだやっぱりムカつくから嫌だけど、実際は……。
お前なしじゃ……もう、だめかも。
そう感じた瞬間、新藤が耳元で囁いた。
「僕なしじゃ、いられないだろ?」
なんでお前はいつもいつも人の心を読んどるんじゃー!!
読心術使いの男に捕まったのが運の尽き。
そいつにここまで躾けられたわけだから逃げるなんて不可能。
だったら今度は俺がお前を躾けてやるまでだ!!
「おい、新藤! 俺だっていつまでも言いなりじゃねぇからな! お前だって俺なしじゃ生きられないようにしてやる!」
そう叫んだのもつかの間、コイツは余裕の笑顔で俺に言ったんだ。
「そんなの、とっくの昔にそうなってるよ」
そう言いながら俺に口付けるコイツはやっぱり最強なのだ。
柏木千秋……未だ、勝率0パーセント。
=第1部 終了=
(番外編などを挟んで第2部に続く→)
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