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10.溺れれば夢中 18

新藤の指が優しく俺の髪をすく。 「だから、千秋が何もかも初めてで嬉しかった。だから全部僕が教えて、僕色に染めたいって思った」 「…………」 「その為にも童貞でいて欲しかったんだよね」 「な、なんでだよ」 「気持ちいいことは僕から与えたかったんだよ。だってさ、童貞卒業したらどこかに行ってしまうかもしれないだろ? でも……それは僕のエゴだよね」 すると新藤の顔色は見る見るうちに暗くなっていき、でもそのまま話を続けていく。 伏せられたまつ毛が揺れた気がした。 「さっきだって、もしかしてその子と……って考えたらさ、つい嫉妬のような感情が抑えきれなくなって。でもそれは僕だけの千秋でいて欲しいからだけど、千秋にとってどうなの? ってさ」 新藤は申し訳なさそうに力なく笑った。 こんなに弱々しい新藤を見るのは初めてで、そんな風にさせてるのが俺だなんて、なんか信じられない。 でも同時に話を聞きながら、俺の中でそれとは別のはっきりとした感情がメラメラと湧き上がっていた。 「勝手に決め付けんな!」 そして、いきなり大きな声を出したものだから、新藤はかなり驚いたようで目を丸くしている。 「決め付けって?」 勢いだけで声を出したものの、少し恥ずかしくなって少し俯きながら答えた。 「一瞬は童貞卒業とか思ったけどさ……俺だって、一生童貞でも……悪くないかな……とか、思ってたんだ」 すると新藤が俺の頬を指の背で優しく撫でた。 「それは一生、僕といてくれるってこと? これはプロポーズだったりする?」 「うっせー、プ、プ、プロポーズって何だよ! 勘違いすんなっ、こんな体にした責任を取れと言ってるんだ!」 「こんな体ってどんな体かな?」 「わかってて聞くな! うぜーんだよ!!」 悪態つく俺のことをニッコリと微笑みながら見ていた新藤の顔が近づいてきた。 それはいつもの調子を取り戻したような表情で。 そして、唇が重なり。深く深く……キスをする。 「千秋はずっと、僕のだよ……」 心地よい響きにうっとりしそうになった。

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