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10.溺れれば夢中 17

「……今日はさ、話を聞き損ねて断るタイミング見失ったんだ。そもそも何の話だったかもわからない」 「どうして聞き損ねたの?」 「急に挙動不審になったから、どうしたんだ? って思ってたら話聞き損ねて」 「それは相手に対して失礼だね」 最もですよ。わかっていますよ。 「でも、さっきお前が言った童貞捨てられるかも……ってのも、一瞬だけ思った。……ごめん」 俺が言うと、新藤は表情を変えることなく静かに俺のことを見ている。 何か言って欲しい。例えそれがキツイ一言であったとしても何か言って欲しいのに。 居た堪れない気持ちになっていると、新藤が軽く目を伏せてボソッと静かに言った。 「今日、千秋がさ……僕に何人と付き合ったかって聞いたじゃない?」 そういえば、今日俺はそんなことを聞いていた。 新藤ははっきりとは教えてくれなかったけど。 すると、新藤は弱々しく笑うと、視線を上げた。 「付き合うって今までよくわかんなかったんだ。なんとなく言い寄られて付き合うような事したりセックスしたりこんなもんかなって思ってた。でも、その概念を覆したのはね…………千秋なんだよ」 そう新藤はゆっくりと俺に向かって話した。 …………? 俺……? !? 「えぇ──っ!? え? どういう事?」 「本気の付き合いっていうのは千秋だけ。千秋と一緒にいて初めて、あぁ付き合ってるってこんなに満たされるものなんだって知ったんだ。今までの全ての経験を白紙に戻したくなるくらいの感情なんて、初めて味わったんだよ」 意外な新藤の告白に、見る見るうちに俺の顔は赤くなっていく。 そして、心臓はドキドキとうるさいほどに高鳴っていく。 そんな俺とは対照的に、新藤の声はとても静かだった。

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