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番外編① 僕の可愛い人 2

朝、教室に入ると血相を変えた千秋が僕の方へと走って来た。 「聞いているのか!? クソ新藤!」 「千秋、おはよう。どうしたの? 朝から大きな声を出して」 「どうしたの? じゃねぇよ!!」 千秋はなぜか物凄く怒っているように見える。 ま、こんなのは日常茶飯事なので驚きもしないけど。 そして千秋は僕の腕を掴むと、教室を出てひとけのない場所まで連れて行き、眉間にしわを寄せて僕のことを睨み付けた。 「どうしたの?」 「おい! お前……これは何だよ!」 そう言って指差すのは昨日、僕が付けたキスマーク。 「あぁ、キスマーク」 「名称を聞いているんじゃねぇ。どういうつもりだと聞いているんだ!」 「付けたくて付けた」 昨日、僕はつい嫉妬でカッとなってしまい……その勢いのまま千秋を抱いてしまったんだけど。 いつもなら見えない所にしか付けないキスマークを、昨日は思わず見えるところに付けてしまったのだ。 「ふざけんなよ! 帰って咲良に『お兄ちゃん不潔……』って言われたんだぞ! 兄の威厳をどうしてくれる!?」 そもそも、千秋に兄の威厳があるかは置いておいて。 帰るまで気付かなかったのだろうか? 一応、シャツのボタンをきっちり留めれば隠れるところに付けたんだけどな……。 校則違反をするから見えちゃうんだよ。 そう思いながら千秋のシャツのボタンを留める。 「こうやってボタンを留めておけば見えない。僕だって考えて付けてる」 「はぁ? そういう問題じゃないだろ」 悪態つく千秋を引き寄せる。 「本当は、千秋は僕のだって叫びたいくらいなんだよ」 「それとこれとどう関係があるっていうんだよ」 「ニブイな千秋は、これは僕の印でしょ?」 そう言って千秋の首筋にあるキスマークを指で撫でると、千秋は一瞬だけ体をビクッと震わせた。 可愛い。愛すぎる。 今すぐ、どこかで抱きしめたい。

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