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11.甘く溶けていく 2

それは、数日前に遡る。 10月上旬に2学期の中間テストが行われた。 出来は上々と言いたいけれど、元々勉強が得意でない俺は、たいがい3教科くらい追試を受けてギリギリ補習を免れる……。というのがいつものパターンなのだ。 でも今回は新藤と勉強したこともあり、いつもより平均点もアップしたし追試は数学の1科目だけ。 その数学も実は惜しくて、あと1点あれば追試じゃなかったのに。 でも、俺の中では今までで一番良い結果だったので喜んでいたら。 ……新藤がご立腹だったのだ。 「俺の中では上々だったんだからいいじゃん。母さんも上出来だって言ってたし」 「僕が教えたのに追試なんて。しかも一番時間をかけた数学なんて」 「いつもに比べたら全然いいんだよ。期末、頑張るからさ」 本人が良いと言っているのに新藤は頭を抱えている。 真面目か! って心の中で思っていたら、新藤が俺に向かってこう告げた。 「僕が甘すぎたのかもしれないね」 どういう意味? 意味がわからなくてきょとんとした顔をしているにも関わらず、新藤はため息をついて続けた。 「つい甘くなって僕自身も抑えがきかなかったのも原因だろう……」 新藤は訳の分からない話を続け最後はこう締めくくったのだ。 「追試が終わるまで手を出さない。だから存分に集中しろ」 「え、……えっ!? なんで!?」 「千秋の集中力を切らないように努力するから、千秋も頑張って追試の勉強をしてね」 いやいや、ちょっと待ってよ、新藤くんよ……。 俺が追試になったのはアンナコトやソンナコトが原因じゃないと思うんだけど。 俺の頭の問題なんだけど。 という俺の心の叫びが新藤に届くはずもなく、そんなこんなで追試までの1週間……接触禁止令が出されたのだ。 そこまでしなくても……と思ったが俺が追試になったばっかりにえらく落ち込んでいる新藤をみると居た堪れないので俺も素直に勉強することにした。 でも……。 俺だって健康な男子高校生なわけで。 毎日、我慢の日々なのだ。

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