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第12章 とびきりを届けたい 1

あの後、両親に追試でいい点が取れたことを伝えると、たいそう喜び新藤とこれからも仲良くするように言われた。まぁ、親が思っているより遥かに深い仲なのが胸にチクリと刺さったが、こればかりはしょうがない。 俺の幸せが一番の親孝行だと思って欲しいと願うだけだ。 そんなこんなで日曜日は何もすることなく過ごし、月曜日がやってきた。 だるいが制服に着替えて学校に向かう。 あくびしながら歩いていると、教室に向かう廊下で新藤の姿をみつけたのだが、担任と何か話しているみたいなので立ち止まり少し離れたところから様子を伺っていた。 やっぱり引っかかるのは、俺が眠っている間に新藤が呟いた言葉だ。 この前、自分の気持ちは新藤に伝えたつもりだけど、それもちゃんと伝えられているかわからないし。 すると、訳もなくため息がこぼれてしまった……。 「新藤には何が必要なんだろう?」 無意識に独り言を呟くと間髪入れずに 「そりゃ、永遠の愛でしょ!」 と背後から聞こえて驚いて振り返った。 「な、なんだ!? ……って塚本かよ。脅かすな」 「で? 何の話?」 「思いつきで割り込んでくんな!」 「だって、柏木くんが新藤くんのことを熱い視線で見つめてたんだもん」 「熱くねーから」 こっちが呆れていてもどこ吹く風と言う感じで塚本は妄想を繰り広げている。 そして塚本は、よくわからない妄想の世界に入り込んでいたかと思えば、いきなり改まった雰囲気で俺のことをみた。 「ねぇ、どうして柏木くんは新藤くんのこと名前で呼ばないの?」 は? 名前? 「新藤って呼んでるだろ」 「名字でしょ? どうして下の名前で呼ばないの?」 「はぁ? 別に意味なんてねぇよ。内川のことだって名字で呼んでるし」 すると塚本はなぜかため息をもらす。 「内川くんは柏木くんのことを名字で呼んでるから名字でもいいけど、新藤くんは千秋って呼んでるんだよ? だったら普通、修平って言うでしょ」 「そんなものなのか?」 「そうだよ。きっと新藤くん傷ついてるよ……」 塚本は切なげに目を伏せた。 マ、マジか……。呼び方にそんなルールがあったとは。 知らなかった……。

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