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16.心からのギフト 10
…────
俺が風呂からあがると修平は部屋で雑誌を広げていた。
「お先。お前も早く入れよ」
「うん。入ってくるね」
喉が渇いていたことを思い出した俺は、部屋を出る修平を引き止めた。
「あのさ、のど渇いたんだけど何か貰ってもいい?」
「下の冷蔵庫から好きなの飲んでいいよ」
そう言われたので、冷蔵庫の中から飲み物をいただくことにした。
冷蔵庫の扉を開けて、中を覗いてみる。
「何があるのかな……」
すると俺の目に“巨峰”という文字が入ってきた。
「お、巨峰がある。俺、好きなんだよなぁ」
昔からぶどう系ジュースが大好物だった俺は迷わずにそのジュースを手に取った。
悩んで頭を使いすぎて甘いものが飲みたかったので巨峰ジュースはもってこいだし。
修平があがってくるまでにシュミレーションだってしたい。
やっぱりサプライズというものはタイミングが大事だと思うからだ。
だから俺は修平の部屋に持って行ってそれを一気に飲み干した。
飲み干したんだけど……。
しばらくすると自分の様子がおかしいことに気付く。
「あれ? なんか、頭がグルグルする……」
おかしいな……。
目の前が歪んでいるのか、目に映るものが二重に見える。それは目をゴシゴシと擦っても変わることはなく、次第に俺が回ってるのかフワフワしたような変な気分になって来たかと思うと。
今度は、どんどん瞼が重くなる変な感覚。
まだ、寝ちゃいけない。
今日は修平に誕生日プレゼントを渡さないといけないのに……。
やらなきゃいけないことがたくさんあるのに……。
なのに……。
……。
そこで、俺の記憶は途切れてしまった────。
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