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番外編③ 僕だけの可愛い人 2
昨日、千秋から電話がかかってきた。
明日はどうしても僕の家に泊まりたいという。
修学旅行の代休だから、別に来てもいいけど千秋のほうから言ってくるのなんて珍しい。
しかも、さっきからずっとソワソワと落ち着かない様子も電話口から感じ取れるし、なんか変だ。
僕の家で何かするのだろうか。
よし、千秋が来るというならば……。
千秋との通話を終えた僕は、そのままある人に電話をかけた。
「あ、明日の夜なんだけど。姉貴とデートしてきなよ。アリバイなら僕がなんとかするから朝帰りでも大丈夫だよ」
通話を終えると、無意識に顔が綻んだ。
これでよし。これで邪魔な姉貴は出掛けることだろう。
せっかく千秋が何か考えて家に来てくれるのに姉貴がいたらめんどくさい。
それに千秋にベタベタ触られるのも嫌だから、姉貴の彼氏に電話をして明日の夜は連れ出してもらうようにしておいた。
忙しい両親は、毎晩接待やら残業やらで午前様が当たり前。
酷いときは帰らなかったり、朝方帰ってきてはまた出かけたりしてなかなか家にいない。
だから、うちは門限やらにうるさくないんだろう? とよく聞かれるのだが、そんなことは全くない。
わりと何をやるにしても自由ではあるけど、何故か昔から遅い帰宅と外泊に関してだけは厳しい。
めったに親と顔を合わせることがないから、親も僕たちの事は把握していないと思いこんでいたのだが……。
数年前、無断外泊した姉貴がめちゃくちゃ怒られているのをみて理解した。
友達の家だとか事前に了承を得れば別だけど、姉貴のように彼氏の家など言語道断。
だから、僕も姉貴もめったなことでは外泊はしないようにしていた。
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