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番外編③ 僕だけの可愛い人 3

一度こっぴどく怒られた姉だったが、やはり外泊というものには魅力を感じるらしく、僕は度々アリバイ作りに使われていた。 昔は煩わしくも感じたけど、千秋と付き合い始めてからはそれを逆手に取らせてもらっているので今はおあいこだけど。 姉貴の失敗を間近で見ていた僕は、自分で言うのもなんだけど要領がいい。 2人になりたいときには、姉を外出させるに限る。 だから明日も姉貴が邪魔なので、弟の僕が上手くやってやろう。 これで、姉貴のほうは心配ない。 問題がひとつ片付いたところで顔が綻んだ。 そしてベッドに横になりながら、明日は千秋に何を食べさせてあげようかと考える。 やっぱり好物のオムライスかな? 張り切ってハンバーグとか乗せてあげると喜ぶかもしれない。 うん。そうしよう。 ベッドの中で献立が決まった僕は、その日早めに眠りについた。 ──そして、次の日。 姉貴は予想通り機嫌よく出掛けていく。 しめしめと思いながら今のうちに買出しに行こうと思い、財布をポケットに入れて家を出た。 近くのスーパーに行って必要なものを買い込み家に戻っても、千秋が来るまでまだ時間が少しあったので材料の下ごしらえをしながら待っていると、時間通りに千秋はやって来た。 千秋が来るとわかっている日はいつも玄関の鍵を開けている。 だから千秋は、いつもと同じようにバタバタと足音をたてながらダイニングへと入ってきたのだが。 そしてダイニングの扉を開けて、キッチンに立っている僕と目があった瞬間に……。 どうしてだろう? 千秋の顔色が一変してしまった。 「な、なんだよ! なんで料理作ってんだよ!」 そして、よくわからないけど開口一番に怒られる。 「え? どうしたの?」 何が何だかわからない僕は首を傾げながら佇むしかない。

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