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17.その目で見つめて 15
話をしていると辺りも暗くなって来た。
明日も休みだから修平の家に泊まることにしていたので、店を出た後も修平とその辺をぶらつきながらゆっくり帰ることにする。
はぁ……今日はなんか楽しかったなぁ。
もしも俺が女だったら毎日でもこうやって堂々と手繋いで一緒に歩けるのかな?
なんて、また馬鹿な妄想をしてしまう。
修平と手を繋ながら、そんな幸せな余韻に浸っていた矢先に後ろから声がした。
それは女の人の声で……。
「あれ? 修平じゃん?」
振り返るとそこには女子大生っぽい長身の美人が立っていたのだが。
「ねぇー。新藤修平でしょ? 忘れたの? 私、カナだけど」
修平は無表情だったけど、カナと言う人は面白そうに笑いながら近付いてきて、俺のことを上から下まで値踏みするように見た。
「この子新しい彼女? 随分可愛い系ね。あんたって綺麗系が好みなんじゃなかったっけ?」
カナと言う人はいったい何者なんだろう……。
胸が少しだけ、ザワついた。
彼女が近づいてくると、修平は俺の肩を抱いてその場を去ろうとする。
「ちょっと待ちなさいよ!」
俺が振り返り立ち止まると、修平がさらに手を引きながら言った。
「千秋、いいから行こう」
軽く混乱している俺に向かってカナと言う人が言葉を投げかける。
「千秋ちゃんって言うんだ。今はその子がお気に入りってわけ? でも、気をつけてね千秋ちゃん。修平はね、気まぐれで飽き性だからすぐ捨てられるわよ」
“すぐ捨てられるわよ”
そんなわけないと思いながら、響く声がもどかしい。
さっきの人は修平と……関係があったんだろう。
なんとなく刺さる言い方から、彼女の方は修平が好きだったに違いない。
いつごろの関係だろう?
どうやって出会った?
付き合ってた?
ヤッたんだろうか?
……付き合ってたなら、きっとヤッてるよな。
自分でもイライラするくらい、くだらない疑問が湧いてくる。
そんな俺の思考が伝わってしまったんだろうか……。
修平は家に帰るまで何も言わなかったけど、手を痛いくらいギュッと強く握り締めていた。
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