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18.背中合わせ 14

家に帰りながらいつもよりくすんで見える夕日を眺めていた。 いつも目にしているものと変わらないはずなのに、あんな色だっけ? 数日前まではあんなに世界が色鮮やかに見えたのに、その時と同じものしかないのにまるで違うもののように感じる。 まったく同じ世界なのに、隣に修平がいないだけでこんなにも違うんだって実感した。 あれ? 修平がいない世界ってどんなんだっけ? 忘れちまうくらい楽しくてキラキラしてた一昨日までの世界はもう、無い…───。 こんなにもまだ好きなのに。 ──家に帰ってきたけど、そのまま自分の部屋に向かう。 「千秋、ただいまくらい言いなさい」 返事をする気力もなく、部屋に入るなりベッドに倒れ込んだ。 まだ信じられない。 冷たい視線に冷たい言葉、目の前でアドレス帳やら色々と削除されたのに、まだ修平を信じたいと思っているのは自分のためなんだろうか。 心のどこかで、まだ “冗談だよ” とか “焦った?” とか言って笑いながら修平が戻ってくるんじゃないかって思いたいだけなのかも。 出るのはため息ばかりだ。 どれだけ時間が経ったかはわからないけど、暫くするとノックもなく部屋のドアが開けられた。 「お兄ちゃ……って、電気もつけないで何してるのよ」 入ってきたのは咲良で、夕食だから呼びに来たらしい。 気付けばすっかり日も落ちて、部屋は真っ暗になっていた。 「ごはんだって」 「いらねぇ」 「食べないと背が伸びないよ」 「いらねぇんだよ」 年々咲良は母親に似てきて俺に小言を言ってくるので、布団をかぶってふて寝した。 「もう! 反抗期!?」 反抗期はお前の方だろ。 咲良が部屋から出て行ったので布団を捲ってまたベッドに座る。 きっと何か理由がある。 きっとあるはずだ。 あるはずなんだ。

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