339 / 622

第19章 俺の声を聞け 1

────── ───… 修平に別れを告げられてから数日経った。 「新藤くん彼女と別れて新しい彼女が出来たらしいよ!」 「今度の彼女すごく美人なんだって!」 「年上らしいよ」 延々と続く女子達の話は嫌でも耳に入ってくる。 どうやらカナとは毎日会っているようで、最初は脅されたとか理由があるはずだって思ってたけど、違うのかもしれないと思い始めていた。 やっぱり女がいいと思ったとか。 ……硬い男の体より柔らかい方がいいか。って、そんなに違うのかな。……違うんだろうな。 「なぁ内川、……女って柔らかいの?」 「うん。まぁ……ってあれだぞ! まだ塚本とはそういうことはしてねぇからな」 「別に塚本とのことを聞いてるわけじゃねぇよ」 赤くなって焦り出す内川の話に興味を持たずため息をつけば、内川が俺の肩を軽く叩きながら顔を覗き込んでくる。 「つか、まだ新藤と喧嘩してんのか? 早く仲直りしろよ?」 心配してくれている内川には悪いが、仲直りできるならとっくにしてると思いながら逃げるように廊下に出た。 でも今の俺にはどこにも安息の地はないようで、廊下に出てすぐに隣のクラスの女子に話しかけられた。 「ねぇ、柏木。新藤くんって本当に前の彼女と別れて新しい彼女できたの?」 「俺が知るかよ。本人に聞いたらいいじゃん」 「聞いたけど答えてくれなかったんだもん。前の彼女の事は笑って答えてくれたけど……なんか、最近感じ変わったし」 「俺が知るか!」 「なによ! 柏木のけち」 最近、こうやって他のクラスの女子に修平のことをやたら聞かれるから嫌になる。 修平も自分で言えばいいじゃないか! あれから修平とは話をしていない。 冷たくあしらわれるのが怖くて話しかけることが出来ないでいた。 こんな時同じクラスというのは嫌でも相手が視界にはいってしまうから厄介だと思う。 それに何もなかったかのように笑う修平をみていると、取り残された自分が虚しくてもう忘れるしかないような気がしていた。

ともだちにシェアしよう!