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26.湯けむりで目隠し 5

でも俺は、やっぱりあいつの性格は難ありだと思う。 何故ならあいつは……。 俺が東海林と初めて会った頃のことを少し思い出していると後部座席から身を乗り出すようにして航が東海林を質問攻めにしていた。 「ジョージくんも修平くんと同じ大学ってことは頭良いんだね。2人はどうやって友達になったの?」 すると東海林は運転しながら航の質問にあまり表情を変えることなく答えていく。 「入試の成績が良かったらしいから俺から声かけた」 「入試の成績なんてどこで調べたの?」 「先生に聞いたら教えてくれた」 「で、なんで成績関係あるの?」 すると東海林はそりゃ決まっているとばかりに当然のごとく言い放つ。 「友達になるなら俺と同じくらい頭が良くて、俺と同じくらい顔が良いのがいいから」 ……俺が東海林の性格が難有りだと思う理由。 それはナルシストだからだ! 自分で言っちゃうとことか恥ずかしいし、なんだよ修平に向かって俺と同じくらいって。 何様だ!って俺は思うんだけど、いつも修平はそんなこと気にしてないみたいで、今日も航と東海林の話なんて気にせず外の景色を眺めたりしている。 俺から見える車のサイドミラーには助手席に座るそんな修平が映っていた。 しかし、何度か聞いた東海林の修平と友達になった理由を呆れ顔で聞いている俺とは対照的に、航は目を輝かせて大きく頷いている。 「自分で言っちゃうとこがスゲー! でもジョージくん、侍みたいでかっこいいと思うな! オレもー!!」 侍ってなんだそれ!? 何がだ? 顔がか? でも、さすが航とでも言うところだろうか。 初対面であっさり受け入れるところなんてどんだけ柔軟性があるんだよ。 「侍? 意味わかんないけど」 「えー、なんかジョージくんって武士っぽいって意味だよ」 「答えになってないけど。お前、馬鹿なのか?」 「あははー、バカだけどさー、ひどくない?」 東海林の嫌味にも笑いながら返す航ってなんかすげー。航と東海林って、正反対っぼくて噛み合わなさそうなのに意外と噛み合っているのかその掛け合いに少し笑ってしまった。 でも普通なら嫌味だろって思うところだけど、実際東海林は学部主席らしいので自分で頭がいいと言っても納得できてしまう。 ……悔しいけど。めちゃくちゃ、悔しいけど。 そんな感じで和気あいあいとしているうちに目的の温泉地にやってきた。

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