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第28話 朝陽の向こう
一年が過ぎた。
和樹と啓司は二人でニューヨークのティファニーの前に来ていた。
二人の新婚旅行だった。
「和樹にここで指輪を買ってあげたくて・・・」
そう啓司が言うから新婚旅行がニューヨークになった。日本での同性婚はオフィシャルではない。だから二人も事実婚的なパートナー制での関係だ。だが、そんなことは正直どうでもよかった。なぜなら二人の周りの人は皆、二人が一緒に住み始めたことを機に、この二人を夫夫として認めてくれていたし、啓司も会社で特別言いまわることでもないからそのままにしていた。取引先の由良専務に特別可愛がられているのがなぜなのか社内ではわからない・・・という風にはなっていたが。別段仕事で問題になることもなかったからだ。
ただ、二人の中でのケジメをつけたかったのだ。
二人でティファニーへ入る。
結婚指輪を探していることを告げると、店員が色々見せてくれた。二人は揃いのペアリングを購入した。飾りのないシンプルなものだ。
和樹も、もうダイヤの飾りが欲しいとは思わなくなっていた。
二人でティファニーの前でコーヒーを飲みながら写真を撮った。これ以上の幸せはもうないと思う二人だった。
そしてその夜は指輪だけを身につけて、二人はシーツの間に挟まって朝まで過ごした。
ニューヨークの摩天楼の間から太陽が昇る。
新しい朝が始まる。
二人はその朝陽を見つめて、そしてくちづけを交わした。
完
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