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第27話 由良和樹
和樹は啓司を実家に連れていくことにした。
今日は姉と赤ちゃんが帰ってくる。
しばらくの間は実家の方が広いと言うことで、義父が住む家に、あやと秀一さんが一緒に実家で暮らすようだ。一週間の休みをとっているようで、少しゆっくりできる様だった。
啓司は緊張していた。
一通りの和樹の生い立ちは聞いた。
どこかで聞いた話に似ていると思いながらも、それよりもゲイのカップルとして初めて人前に出るのだ。和樹は家族にはカミングアウト済みだが、啓司は会社では愚か、家族の中でも母親にしか言っていなかった。
緊張の足取りで和樹の実家に一緒に向かう。
実家の家の前まできて、門構えを見て驚く。
「え?和樹っていいとこの子なの?」
「僕は違うけど、義父は会社の専務だよ」
「え??専務?」
そう言いながら、表札を見る。
「和樹・・・お前の苗字って由良?」
「うん。5年前からは由良だよ?なんで?」
「眩暈がしてきた・・・・」
インターホンを鳴らすと門が開いた。
「和樹早く入ってきて。
夏樹ちゃんが起きそうだから!」
元気な姉の声が聞こえた。
「娘の名前、夏樹にしたんだって。夏生まれだからって。単純だよねー。可愛いからなんでもいいけど」
もうすっかり和樹はおじさん気取りだ。
玄関で義父が立って迎えてくれている。
「おう!和樹、彼氏を連れてきたか!初めまして。和樹の父の・・・」
そこまで言った時に、啓司は頭を下げた。
「由良専務、ご無沙汰してます!相良です!」
「え??????」
和樹も義父も目を丸くしている。
「相良君・・・君が言っていた簡単にいかないって・・・和樹だったのか????」
「はい・・・その様です。僕も今まで知りませんでした・・・和樹が由良専務の息子さんだったなんて・・・」
一番わけがわからないのが和樹だ。
「え??なに??どう言うこと??」
その様子を見て義父が笑った。
「そうかそうか!和樹のことを言っていたんだな。確かに和樹は簡単じゃなかっただろうな・・・」
そう言いながら一人頷いている。
「でも相良君なら私も安心したよ。和樹、相良君に迷惑をかけるんじゃないぞ。彼は将来有望株なんだからな」
そう義父に言われる。
「わかってるよお父さん。僕は啓司の応援隊だから!」
そう言った和樹を見て今度は啓司が笑った。
「相良君、不束な息子ですが宜しくお願いします」
そう言って義父が頭を下げる。
それに啓司は狼狽えて、
「専務よしてください!
こちらこそ、和樹と幸せになります!」
大きな声で宣言した。
「ちょっと啓司!それなんかプロポーズみたい!」
和樹がそう言うとそれもそうだなと全員で笑った。
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