5 / 6

5

次の日。 まだ誰もが眠っている、明け方の早朝。 僕は静かに静かに、この生まれ育った小さな村を発った。 今日、僕の色彩をアルの目に移す手術が行われる。 「アルには〝これは僕の色彩だ〟と伝えないで」と先生たちにお願いした。 色彩は、移された人に馴染むまで約1年ほどかかる。 だから、次にアルの目が見えるようになるのは、また年に一度の夕焼けの日くらいになる筈だ。 『なぁ。夕焼けって、何色なんだろうなぁ』 昨日のアルとの会話が、ふと蘇って来る。 (クスッ。それは、自分の目で確かめてね) でも、そうだなぁー……… ーー強いて、言うならば 「〝君の瞳〟と同じ、 〝エリアージュ色〟だよ。アル」 僕は、これからモノクロの世界で生きていく。 あぁ……さよなら、アル。 幸せになってねーー。 (願わくば、貴方の隣で同じ夕焼け色を見たかった) (どうか、どうか……お元気で) *** fin.

ともだちにシェアしよう!