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アルと別れてから、僕はすぐに先生の所へ向かった。 ガラッ 「先生」 「エアーシュ…本当にいいのか……?」 「はい。 ーーお願いします。先生」 「っ、わかった…… みんな、準備をするんだ」 カラーズには、実は治す方法がひとつだけある。 それは、カラーズじゃない人から〝色彩〟を貰うこと。 健常者が持つ色彩を抽出し、それをカラーズの人に移す。 そうすれば、カラーズは元どおり治る。 ーーしかし、その分抽出された人間がカラーズとなってしまう。 だから、誰も色彩をあげたがらないし、あげる人なんて絶対いない。だからカラーズは治らない。 『僕の瞳の色を…色彩を、アルドに渡してください』 こういった手術は両親とかの許可が必要だけど、僕にはそんなのいなくて。 『エアーシュ。 君は、何を言ってるか分かってるのか?』 『先生。僕は、 ーー戦争に行きます』 この国の兵士となり、色を取り戻す為に戦う。 それは、アルと出会った時から決めていたこと。 アルは生まれた時からずっとカラーズで、色の事を全く知らない。 だから僕が兵士に志願して戦い、少しでもこの国に色を返してあげたい。 そうしてアルの目に色が映るようになった時、少しでもそれがモノクロの世界じゃないように…してあげたい。 兵士に志願した者は、殆どがもう帰っては来ない。 稀に帰って来る者は、みんなカラーズになっている。 ただのカラーズじゃない。目の色・髪の色・肌の色が全部取られ、本当のモノクロとなって帰って来るのだ。 もしかしたら、僕の瞳の色は誰かに取られる可能性がある。 どこの誰かもわからない奴に取られるなんてゴメンだ。 ーーそれなら、僕はアルにそれを渡したい。 『っ、エアーシュ。考え直すんだ』 『先生、僕はもう決めました。だからお願いです』 『………っ、エアーシュ……』 僕の強い意思に、先生は顔を歪めながら書類にサインをしてくれた。 「ーーエアーシュ」 手術台に寝かされ麻酔が効き始めるまでの間、先生に呼ばれた。 「はい」 「君の瞳は、綺麗なエリアージュの色をしているよ」 「〝エアーシュ〟という名前は、エリアージュから来たものじゃないかい?」と問いかけられ、そうなのかもしれないと思った。 僕の瞳は、赤とオレンジと紫が入り混じった不思議な色をしていて。 夕焼け色と同じだな、とよく思っていた。 (そうか。 もしかしたら僕の名前は、そうやって両親が付けてくれたのかな?) わからない。 でも、最後にそんな事に気付けて良かったと思った。 麻酔が効き始め、スゥ……と眠くなる。 「さぁ、始めるよーー」という先生の声が、遠くに聞こえた。

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