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戯れに
ーーリーン リーンーー
主人のルースが呼ぶ鈴の音が屋敷の中に響く。
従者であるアレクは急いでルースの待つ執務室へと向かった。アレクはこのアダムズ家に仕える従者の一族の産まれだ。幼い頃から忠誠心を叩き込まれていた。ルースが16の頃、アダムズ家には待望の長男ルースが生まれた。その時からアレクはルースの側近として、世話役として片時もルースから離れる事は無かった。
そしてルースが成長してもなお、こうして仕えている。
「お呼びでしょうか」
「アレク今日も相手をしろ」
「ルース様……今夜もお戯れですか?」
「あぁ、そうだ。今日はそうだな……他の使用人も数人集めておけ」
「……」
「分かったのか?返事は」
「イエス、マイロード……」
複雑な顔を見せながら主人であるルースの足元に膝まづいた。
主人であるルースの命令は絶対だ。例えそれが自分の意に反していたとしても、アレクは秘めた想いを胸に従うしかなかった。
膝まづいているアレクを見つめる青緑色の目が細められる。
「それでいい。今夜、楽しみにしているよ」
「……はい」
要件のみ簡潔に告げられて仕事に戻るように言われる。通常の職務を全うするも、頭の中はさっき告げられた事でいっぱいだった。
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