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確かな誓
「貴方に……私の気持ちを押し付けたくなくて言えずに居ましたが……もう限界みたいです……」
「アレク……」
「私は……主としてでは無く、一人の人間として貴方の事を愛しています」
「……いつからだ?」
「……ルース様がお生まれになった時にはまだ生涯仕える主としか思ってませんでした。成長されるにつれて美しくなり、その気高さに惹かれるようになりました。ルース様は忘れておられるかも知れませんが、私は昔旦那様に婚姻を進められたことがありました。結婚する気も無かったので断ろうとしたらクビにすると言われました。それでも私は自分自身が愛する人と実を結びたかった。だから旦那様にクビでも構わないと伝えようとした時、貴方が言ってくれたんです。俺にはアレクが必要だ、と。幼いながらに私を想い、旦那様にそれを伝えてくれた貴方を見て私はこの気持ちに気が付きました。だからこそ、どんな事があってもルース様から離れるような事はしたくないと思うようになったのです」
「…………」
「……申し訳ありません」
アレクは深々と頭を下げた。
「何故謝る」
「すみません……」
「……お前が……想ってくれてるのはなんとなく分かっていた」
ルースはゆっくりと言葉を選びながら言葉を発し始めた。
「俺もなんだかんだお前に甘えていた。なんでも許してくれて、無条件で愛情を注いでくれるお前がそばに居ることが当たり前で……いつからか所有物のように扱うようになってしまっていた」
アレクの話を聞きながらルースはずっと考えていたらしい。自分はどうだったのかを思い出したらしい。
「嫌な役回りをさせていたな……」
「いえ……」
「だが、俺はアレクが側にいてくられて良かったと思う」
いつでも味方で居てくれたのも、様々な事を教えてくれたのも全てアレクだった。親よりもアレクと過ごす時間が長かったことに今更気がついたルース。無意識ではあるが、アレクだけが信用できる唯一の人間となっていたのだ。
「ルース様……」
「あまりにもお前といる時間が心地よくて忘れていたようだ」
人の心など言葉にしなければ分からないのは皆同じなのだと改めて感じた。
「それにな、アイツ……ガウリンに触れられたら吐き気がするほど気持ち悪かった。いつもお前がしてくれるのは死ぬほど気持ちがいいのに……最近じゃ誰としてもお前のすることを真似させていた」
そのことに気がついたのもついさっきだとルースは言う。
「……」
「たぶん、俺もお前のことが好きなんだと思う」
思いもよらない言葉にアレクは目を丸くした。
「なにか言う事はないのか?」
「あ、その……信じられなくて……」
「それもそうだな。今までのこともあるから、すぐに信じろとは言わない。これからの俺を見て、それで信じてくれたらいいよ」
ルースは笑いながら言った。
トゲトゲしていたルースの雰囲気がなんだか丸くなったのを感じてアレクは安心したようにため息をついた。
「私はいつでも貴方を信じています……私が仕えるのは今までもこれからもルース様だけです」
「従者としてだけじゃなく、恋人としても一緒にいてくれるか?」
「……もちろんです」
恋人という言葉にアレクは目を輝かせ、頷く。
ルースはアレクを抱きしめて耳元で「これからもよろしくな」と呟いた。
アレクはただ頷くだけで、ルースを抱きしめ返した。
「ところで、続きは?今度は恋人として、俺がしたいことじゃなくてお前がしたいことしてくれないか?」
「ルース様……」
「今日だけの事じゃない、今までの行為も全て恋人同士の交わりとして上書きして欲しい……」
「はい……」
アレクは優しく口付けながらベッドにルースを横たわらせる。する事は変わりないがそこに気持ちが有るのと無いのとでは緊張感が違った。むず痒いような、ワクワクするようなソワソワを、2人は感じた。
しばらくはキスだけを交わしては笑い合った。
ルースとアレクは指を絡めながらルースが言った。
「アレク……俺は一生お前を離さないぞ……覚悟しておけ」
「……イエス、マイロード」
《終》
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