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第2話
あの日から連絡をことごとく無視され、顔も合わせることのない日々が続いた。
そして昨日…
日時と場所を指定して、そして一言…
「謝りたいんだ。」
これが最後の賭け。
そう決心して送信した。
やはり思った通り、返事は来ない。
それでも一縷の望みを持って、待ち合わせ場所として送った昼でも人のあまり来ない公園に向かう。
しかも指定した時刻が夜という事もあり、案の定そこに続く道ですら人と会う事はなかった。
入り口に着いて公園内を見回す。中心から少し離れた所にあるオブジェが見えた。
電灯から少し離れた場所にそれはあるので、そこに立っているのが黒い人影としか認識できないが、俺にはそれで十分だった。
顔がにやけるのを必死に堪えて、公園内に足を踏み入れた。
早足になりそうになるのをわざとゆっくりと足音を大きめに立てながらオブジェに近付く。
秋もすでに俺が近付いていると分かっているはずだが、こちらを一切見ようとはせず、腕組みをして背中をオブジェに預けるようにして立っているのが暗い中でも見えて来た。
その横に俺も同じように立ち並ぶ。
二人の間を流れていく時間。
重苦しく気まずい空気。
それでも横に、隣に、触れられほど近くに秋がいる。
いつまでもこうやっていられたらいいのに。
儚い願い。
しばらく後、二人の間で停滞していた空気が動いた。
「…帰る。」
そう言って秋がオブジェから背中を離すと、踵を返して俺に背中を向けた。
「待ってくれ。」
その肩を掴むと、秋が立ち止まって振り返った。
「いつまで?」
じっとこちらを伺う秋の視線。
それから目を逸らしつつ、秋の背中を再びオブジェに押し付けるようにして顔を近付けた。
顔色ひとつ変えずに、躊躇なく腕を飛ばしてくる。
それを身を捩って避けながら腕を掴んだ。
「くそっ!」
顔を背けた秋の顎を掴んでこちらに向けさせると、キっと睨んでくる。
綺麗だな…
ふっと口元が緩んだ。
顔のすぐ横に手をバンと音を立ててオブジェに打ち付ける。
「壁ドン…ときめくだろ?」
「ばっかじゃねぇの?」
「ときめいとけよ…なぁ?」
対峙する視線と視線。
秋の瞳の中に俺が映る。
「俺を閉じ込めてくれ、お前のその瞳の中に…」
「…くさっ!」
「だよな。知ってる…なあ?」
顔を近付ける。
「謝るんじゃなかったのか?」
「あぁ…でも、どうせまた謝る事になるんだし、その後ででもいいだろ?」
「ずりー奴。」
「だったら今、謝ろうか?」
「後でで…いい。」
秋の瞳の中の俺が消えた。
そのまま二人の顔が近付き、唇を合わせた。
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