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ここが、スタートライン 29

少しだけ距離をあけ、涼くんを見つめる。 「涼くん、俺と、恋人になってくれないか?」 生まれて初めての告白だ。 両想いと分かっていても、ドキドキするものだな。 これも、相手が涼くんだからだろう。 すると涼くんは再び涙目になって笑った。 「はいっ、よろこんで!」 そう言って俺に飛び込んできた。 「黒沢さん、好き。大好き」 「あぁ、俺もだ。 愛してる」 俺たちは互いを確かめるように触れ合って 初めての場所で甘い恋人の時間を過ごした。 もちろん、女装は解いて。 「黒沢俊一だ、よろしく」 「僕は涼、実渕涼。 こちらこそ」 俺たちは始める順番こそ間違ったが、晴れて恋人になった。 互いに身体のことくらいしか知らないが、それも俺たちらしい。 ここから始めればいい。これからはずっと一緒なんだ。 互いに初めての恋人。 ここが、スタートライン。 [完]

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