106 / 106
バレンタイン編 12
「はは、そう拗ねるな。 本当に美味いよ、ありがとう」
黒沢が笑ってそう言うと涼はへちゃむくれた顔で黒沢の方を向く。
「頑張って作ったから……」
手作りのチョコがそんなに嬉しいのか黒沢はニコニコとしている。
そんな顔を見てしまえば、素直に嬉しいと思う。
チョコが美味しいからか、もう最後の一粒だけとなった。
すると黒沢がちょいちょいと手招く。
なんだと思い近づくと、顎を引かれ
口付けられた。
口を開ければコロンと何かが入れられた。
「ん!?」
瞬間、口内にほろ苦い味が広がり、チョコであることに気づく。
二人の間を行ったり来たりするチョコレート。
それが溶けきる頃には
涼も熱を帯びて蕩けていた。
「は、ご馳走様」
ひとしきり堪能し、満足気に笑う黒沢。
最後に涼の口の端についたチョコレートを舐めとってやる。
「ん……」
くたり、と寄りかかってきた涼を抱え
風呂場へと向かう。
さぁ、夜はこれからだぞ、涼くん。
フ、と笑って腕の中の恋人を見る。
二人のチョコレートより甘い甘い夜はまだこれから始まったばかりである。
おしまい。
ともだちにシェアしよう!