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バレンタイン編 12

「はは、そう拗ねるな。 本当に美味いよ、ありがとう」 黒沢が笑ってそう言うと涼はへちゃむくれた顔で黒沢の方を向く。 「頑張って作ったから……」 手作りのチョコがそんなに嬉しいのか黒沢はニコニコとしている。 そんな顔を見てしまえば、素直に嬉しいと思う。 チョコが美味しいからか、もう最後の一粒だけとなった。 すると黒沢がちょいちょいと手招く。 なんだと思い近づくと、顎を引かれ 口付けられた。 口を開ければコロンと何かが入れられた。 「ん!?」 瞬間、口内にほろ苦い味が広がり、チョコであることに気づく。 二人の間を行ったり来たりするチョコレート。 それが溶けきる頃には 涼も熱を帯びて蕩けていた。 「は、ご馳走様」 ひとしきり堪能し、満足気に笑う黒沢。 最後に涼の口の端についたチョコレートを舐めとってやる。 「ん……」 くたり、と寄りかかってきた涼を抱え 風呂場へと向かう。 さぁ、夜はこれからだぞ、涼くん。 フ、と笑って腕の中の恋人を見る。 二人のチョコレートより甘い甘い夜はまだこれから始まったばかりである。 おしまい。

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