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第十四章・9

「疲れていないか、沙穂」 「大丈夫です」  披露宴を終えた夜、沙穂はゆったりとした服装に着替えて真輝の部屋にいた。 「見せたいものがある、って。一体何ですか?」 「もうすぐ始まるよ」  真輝は部屋の窓を大きく開け放ち、傍にソファを動かした。 「さあ、掛けて」 「はい」  暗い夜空に、一筋の光が上がった。  それはたちまち、光でできた大輪の花に開いた。 「わあ! 花火!」  惜しげもなく次々と上がる花火は、夜空を明るく照らしている。 「真輝さん、見せたいものって、もしかして」 「そう。この花火だ」  私と沙穂の、結婚祝いの祝砲だ。 「無駄遣いを、と叱られるかと思ったが、これなら地域住民の皆さんにも喜ばれるかと思ってね」 「一番喜んでるのは、この僕です」  うっとりと花火を観あげる沙穂の肩を、真輝は抱いた。 「愛してるよ、沙穂。この命果てようと」 「愛してます、真輝さん。この身が朽ちようと」  花火はきらめき、そして消える。  しかし二人は、その儚い命の元、永遠の愛を誓った。

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