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第17話

―――――――――― ―――――― 保健室。 七条はベッドに座る良の前に跪き、 痛めた足首へ視線を落とした。 大きく分厚い七条の手のひらが、良の華奢な足首をそっと包み、手当てをしていく。 彼に優しく触れられるたび、 甘い痺れが身体の奥へ広がる。 良はそんな七条の横顔に、 無意識に見惚れていた。 ――七条……。 どうして。 俺を嫌っているはずなのに。 それに連日、俺は君を避けて、 酷い態度を取っていたのに。 それなのに、 どうしてこんなにも親切にしてくれるんだ。 この七条の優しさが、嘘だなんて思えない。 ――本当の気持ちは、どこにある? 「軽い捻挫でよかったな」 七条はそう言って、 ほっとしたように良を見上げて微笑んだ。 「ありがとう。 助かったよ」 突然視線が重なったことで、 良は気恥ずかしそうに感謝を述べた。 「……七条」 「何だ?」 「なんで、いつも優しくしてくれるんだ?」 七条の表情が、 一瞬だけ驚いたように固まった。 「俺はーー… 柳瀬を気にかけるのが好きなのかもな」 そう少し考えるように間を置いて 七条は柔らかく笑った。 「何だよ、それ…。俺が子どもみたいに見えているのか?」 「いや、違う。 ただ、いつもお前をほっておけない」 整った顔で真剣に良を見つめる。 ドクン 良の心臓が大きく跳ねる。 「俺は…七条に嫌われている気がしていた」 良は、必死に顔を逸らし述べた。 「待ってくれ。どうして、そう思う?」 「それは、、」 良は言葉に詰まる。 罰ゲームのことは言えない。 ベッドのシーツをぎゅっと握りしめる。 良は胸の奥に秘めていた思いを絞り出した。 「七条のほうが、何倍も生徒会長にふさわしいからだ」 「俺は、七条のような強さも、牽引力も、何もない…‥。 俺がこの学校に入学しなければ、七条が生徒会長になっていたはずなんだ」 「ふっ」 七条が小さく笑った。 「俺は、会長の立場になんて興味はない」 「……え?」 「それに、周りが喜んで迎え入れたのは、柳瀬だからだ」 七条は、良の目をまっすぐ見つめる。 「柳瀬は、誰よりも優しい心の持ち主だ。 特別な環境に身を置きながら、皆に友好であろうとする。学校を良くしようと、一生懸命頑張っている。そういうところに、みんなが尊敬して、惹かれているんだ」 「それに――」 七条は、少しだけ意地悪そうに笑った。 「もし俺が会長になっていたら、 今頃、スパルタで恐怖政治だったかもしれない、と皆が陰で言っているぞ」 クスッ 思わず、良の口から笑い声が溢れた。 「それは……少し、想像できるかな」 「何だって?」 良が楽しそうに笑っている。 七条は、その顔を静かに見つめた。 「柳瀬の笑顔を、久しぶりに見た」 「え…?」 その言葉に、良の笑顔が止まる。 七条の目線が、まっすぐ良を捉える。 「俺は――」 静かな声が、保健室に落ちる。 「柳瀬に出会えて、感謝している」 「……七条」 その言葉が、胸の奥に深く落ちた。 良は、何も言えなかった。 ただ―― 目の前にいる七条から、目を逸らすことができなかった。 ギシッ。 七条が片手をベッドにつける。 そのまま体重を預けて、 ゆっくりと良との距離を縮めていく。 「……七条?」 思わず、良の声が震える。 目と鼻の先まで近づいた七条が、 良を見つめる。 普段とは違う 熱を帯びたその瞳に 良は息を呑んだ。

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