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第16話
翌日の放課後――。
良は、いつものように七条を避けて、学校を後にしようとしていた。
階段へ差しかかった、そのとき。
「……!」
階段の先に、人影があった。
見慣れた長身。
「……七条」
七条は良を待ち構えるように、
その場に立っていた。
こちらを見つめている。
いつもの穏やかな笑顔はない。
ただ、真っ直ぐに良を見つめる、
真剣な眼差し。
「柳瀬」
低い声が、階段に響いた。
「少し、いいか」
『まずい……』
良の心臓が跳ねる。
『絶対、バレた……』
ここ数日、避け続けていた。
目を合わせないようにして。
話しかけられても逃げて。
二人きりになることも避けていた。
――気づかれないほうがおかしい。
七条が、一段、階段を下りる。
「っ!!」
思わず、良は一歩後ずさった。
「そのっ、俺は……」
言い訳を探そうとした、その瞬間。
足元への注意が逸れた。
「――っ!」
踏み出した足が、階段を踏み外す。
身体がぐらりと傾いた。
「柳瀬!!」
七条が大きく名前を呼び、
咄嗟に駆け下りる。
「……っ!」
良はそのまま数段滑り落ち、踊り場に倒れ込んだ。
「痛っ……!」
足首に鋭い痛みが走る。
七条がすぐさま駆け寄り、良の前に膝をついた。
「痛むのか!?」
七条は眉を寄せ、心配そうに良の足元へ視線を落とす。
「少し…でも歩けると思う」
良はそう言って、立ち上がろうとした。
その瞬間――
「――わっ!」
身体がふわりと宙に浮いた。
「……え!?」
気づけば、良は七条の腕の中にいた。
片腕が背中を、もう片方の腕が膝裏をしっかりと支えている。
――これって……お姫様抱っこ!?
「し、七条!?」
良の顔が、一瞬で真っ赤になる。
「何するんだ!?」
「保健室まで運ぶ」
「いや、歩ける!自分で歩けるよ!下ろしてくれっ!」
「この方が早い」
七条は真剣な顔のまま、良を抱き上げて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待って……!」
良は慌てて七条の鍛えられた胸元に手をつく。
すぐ目の前に、七条の顔がある。
剣道部の稽古を終えたばかりなのか、少し汗ばんだ首筋。
間近で感じる体温。
そして、自分を支えている逞しい腕。
「…………」
良の心臓が、激しく鳴り始める。
――ドクン
『う、嘘だろ……』
七条は、そんな良の動揺には気づかない。
ただ、腕の中の良が落ちないよう、しっかりと抱き直した。
「落ちないように、つかまっていろ」
「…………っ」
低い声が、すぐ耳元に落ちてくる。
良の顔が、さらに熱くなった。
『む、無理だ!!
こんなの、耐えられるわけない~~~!!』
七条の腕の中で、良は心の中だけで悲鳴を上げた。
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