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第26話
***
あれから、俺の自由が少し戻ってきた。
発情期の間は「危ないから家にいてくれ」と言われ、抑制剤を飲みながら海堂さんの家でいつも通り過ごした。
その後だ。
発情期が終わった次の日の朝、
俺の首には何も付いていなくて、しかも大学に行っていいという。
久々に大学に行くと、優が駆け寄ってきて、俺の様子を伺いながらもものすごく心配してくれた。
大学には海堂さんが手回ししてくれていたようで、出席に関してはなんとかなっているようだ。
少し長めの休学だったからか、周りからの目は少し痛いが、他にさして支障はなかった。
その日から海堂さんの帰ってくる時間は日を跨ぐようになり、俺が眠れていない日はすぐに抜いて寝かしつけてくれるようになった。
つまりあの日からセックスはしていないのだ。
***
「うぅ〜…、俺なんかしたかなぁ?」
大学にある小さめのブースで、優に今までの話を聞いてもらいながら、俺は机に突っ伏した。
どうやら、
『呆れられる』
そう感じていた俺の心配は杞憂に終わったようだ。
優は佐倉に詰め寄って、俺が風俗で働いていたことなど全てを聞いたらしいが、そんな俺を責めたり呆れたりすることもなく、「無事でよかった」「俺にも相談して欲しかった」と笑ってくれた。
俺は改めて、優が大好きだと感じたし、これからはちゃんと相談しようって心に決めた。
だから海堂さんとのことも全部話して、今の悩みも打ち明けたんだけど…、
「まず聞きたいんだけどさ、紫音は海堂さんのことどう思ってるの?」
「どう思ってるって………」
「一緒にいて楽しい〜!とかさ、安心する〜!とか」
「…海堂さんといるとすげぇ安心するし、笑ってくれたら嬉しい。可愛いとか言われるとドキドキするし、その………、セックスも気持ちいい………」
「紫音、それさぁ…………」
優が溜息を吐いて、俺の目をジッと見つめる。
「海堂さんのこと好…「あああああ!!!わかってる!待って!」
つい優の言葉を遮って聞かないフリしちゃったけど、何が言いたいかなんてわかってる。
──海堂さんのことが好き。
それは俺が最近ひしひしと自覚していることで、
前に"like"なのか、"love"なのか、
と悩んでいたことが馬鹿らしくなるほど、
俺は"love"の意味で海堂さんが好きだ。
「うぅぅ……、好きだよ。海堂さんのこと。でもね、最近露骨に避けられてる気がして、もう心折れそうで……」
俺は海堂さんへの恋心に悩んでいるのではなく、
最近の海堂さんの俺への対応に心悩ませていた。
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