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第25話

おまけの話. 「黒夜おじちゃーん!」 栗毛色の少年がハニーブラウンの髪の男に駆け寄る。抱き上げられて、三歳の子供は嬉しそうな声を上げた。 「黒夜くんごめん、忙しいのに」 「別に。さわた……紅の方こそ大変だろ二人目の世話」  金髪の赤ん坊を抱いた紅に黒夜はそういって笑った。雪と名付けられた右京家の新しい家族は、女の子だった。祖母である奈々子の勘によると、彼女はオメガだろうということらしい。当たっているなら、かつて紅が使っていたチョーカーの出番かもしれないなと勝手に思った。 雪は紅に似て肌が白く、まつげも長い。目も大きくて、赤い瞳にぷっくりとした頬が紅譲りだと会う人間全員が口を揃えて言った。きっと美少女になるだろう。そう考えて、黒夜は着信を知らせるスマホを取ろうと、美鳥を下ろした。 「もしもし」 『あ、黒夜ぁ? この間の企画のアレ、どうなった?』 「ああ、それか。今から行くから待ってろ」 右京グループの社長の癖に、珍しく末端の会社の企画部に顔を出している美樹からそう問われて、黒夜はバタバタと鞄に書類を差し込む。 「んじゃ、佐渡、またな」 「うん。また」 「おじちゃんばいば~い」 紅と小さな天使たちに手を振る。後に黒夜が愛娘の雪から熱烈な愛を貰い、美樹からうらやましそうな目で見られるようになるのだが、それはまた、別の話。 おまけの話 終。

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