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第26話 番外編 右京一家、温泉へ行く

 ある春の昼下がり。長田に頼んでいた紅茶が届いたのでそれを飲もうと紅が勝手にキッチンに上がり込んだところを、美樹の母の麗に見つかり、話を持ち出されたところで、事は始まる。  温泉、興味行きたくないかしら? と笑う義母にここのところ育児疲れで自分も美樹もへとへとであるのは間違いないと思った。ここは少しくらい、癒されたって罰は当たるまい。そう考えて、紅はこくりと頷いた。決まりねと笑う美しい女は、長田を呼びつけると、紅と美樹と子供たちの温泉支度を整えさせた。  願わくは、母も連れて行ってあげたいなあという顔をしていると、それが漏れ出ていたのか、麗が奈々子さんも一緒だから安心していいわ。と笑った。  かくして、右京一家とプラスアルファの温泉旅行が企画されたのである。 「お待ちしておりました。右京様」 深々とお辞儀をする旅館の仲居に紅と奈々子もつられてお辞儀をする。それを見ていた美鳥と雪も面白おかしく頭を下げた。顔を上げると、お荷物お預かりしますと長田に男性が話しかけており、それを確認した仲居はどうぞこちらへと奥を指した。  華やかだが、歴史を感じさせる厳格さのあるその旅館に紅は感嘆の声を漏らす。 「紅ちゃん楽しそうだね」 「温泉って滅多に来ないから」  感動している紅に美樹が笑う。雪を抱くのでさらに筋肉のついた身体は引き締まっていて、高校の時より断然頼りがいがある。ここ数日は仕事に問題が起きて対応に追われていたが、ある程度区切りをつけて、秘書の黒夜と、部下である河合に任せてきたらしい。  『皐月』と書かれた部屋に美樹と紅と美鳥と雪の四人は案内される。麗と克己は『蘭』、奈々子の部屋は『撫子』だ。豪華な部屋はとても広く、蘭の間に至っては、七人全員で泊れる程だ。  それぞれの部屋に露天風呂が付いていて、季節の花風呂が楽しめると言う。今月はどうやら桜風呂らしい。 手に持っている荷物を置いて紅はさっそく露天風呂の見える窓へと走った。子供たちもそれに倣う。感動して声を漏らす三人に、美樹は何度か来たことがあるのか、感動が薄く、苦笑を漏らした。 「大浴場もすごいよ、ここ」  美樹の言葉に目を輝かせたのは紅である。今回は貸し切りなので混浴で紅が知らないアルファの性に塗れた視線にさらされることもないので美樹は率先して案内した。  荷物を片づけて、四人でいそいそと部屋を出る。大浴場へは少し廊下を歩いた突き当りを右に曲がってすぐだ。 性別ごとに分けられた更衣室にそれぞれ入る。子供たちは美鳥が紅に、雪が美樹にくっついていった。着替えをして、温泉に入ると、美樹も同じタイミングで更衣室から顔を出す。ぽんっと飛び出た雪の腕を捕まえて、身体を抱き上げると、まずは身体を洗うところから始める。紅と美樹の間に美鳥が座って、楽しそうにお湯を被る。四人でわちゃわちゃしていると、ガラリとアルファとベータ兼用の女性用更衣室の扉が開いた。 「あら、紅に美樹君。子供たちまで。仲がいいのね」 「ほんとほんと。私たちも負けてらんないわ、ね。奈々子さん」 入ってきたのは奈々子と麗だった。 「母さん、なんでアルファとベータ兼用のとこから出てきたの……オメガでしょ」 「ちゃんと許可取ってるわよ。というか、一緒に使ってくださいって言われたのよね」 失礼なと言いたげに頬を膨らませる奈々子に、紅はジト目で睨んだ。本当かと疑わしい目で息子見ていると、それを読み取った母は紅の頬を軽く摘まんで本当よ? と笑った。 そうしていると、またガラリと、今度は男性用のドアが開く。克己がきょとんとしながら入ってきて、首を傾げた。 「お風呂って気持ちいいよね、紅ちゃん」 「うん」 ぱちゃぱちゃと遊ぶ雪を抱きながら美樹はしみじみと呟いた。六歳になる美鳥はもう自分でお湯に浸かれるので、奈々子たちに見守ってもらいながらお風呂を堪能しているが、三歳の雪はまだ自分一人で浸かるにはお湯が深すぎるので、こうして美樹に抱っこされている。 「パパ~」  ふと、雪が美樹を見上げて呼んだ。なに? と首を傾げると、顔面に水をぶっかけられる。驚いて、少し停止して、片手で、きゃっきゃっと笑う雪の顔に、お返しとばかりに軽くお湯を弾くと、自分から始めたことだと言うのに、雪はピタリと少し固まって、いきなり泣き出した。  美樹の腕から逃げたいと雪が紅の方へと手を伸ばす。それに答えて、紅は困ったように言った。 「もう、子供なんだから」 「顔に水かけられんの苦手なの~」 「パパのばか! ちらい!」 「ちらっ……!? ごめんって、なんでも買ってあげるから許して」 「ふん!」 ぷいっとそっぽを向かれた美樹は困ったように紅に助けを求めるが、こうなった雪はてこでも動かない。許さないと言ったらしばらくは許してくれないだろう。 「反省して、美樹」 そういうと、美樹はしょんぼりとうなだれた。 豪華なご飯を食べて、機嫌が元通りになった雪と、美鳥を美樹の両親が預かるというので、紅と美樹は二人で露天風呂に入った。温かい風呂が身体をぽかぽかとさせる。 しばらく湯に浸かっていた二人だったが、なんだかそういう雰囲気な気がして、特に口には出さないでどちらからともなく、濃厚なキスをすると、二人は我慢できないとばかりに露天風呂を出て適当に身体を拭いて布団の敷いてある部屋で抱き合った。 美樹の怒張はすでにカチカチに勃ち上がっており、先走りが零れるほどだ。大きくなったそこを、紅はシコシコと手で擦った。同時に紅の乳首を美樹の指が這う。こりこりと擦ればピンと勃ち上がるそこを、陰茎を擦る紅の手を掃って、美樹はぺろと舐めた。 「あ、アッ、んぅ、はあ……あっ」 じゅるっと音を立てて吸うと、紅の腰がびくびくと震える。ずくんと腰が重くなるような快感に飲まれて、紅は甘い吐息を漏らした。 美樹が乳首から唇を離すと、銀色の糸がたらりと垂れる。湿ったそこが外界に晒されることで、少し冷える感覚に、背筋がぶるっと震えた。 後孔に指が這う。期待で孔が収縮すると、つぷりと挿入った指を、いともたやすく飲み込んでいく。ぐっぽりと指を三本飲み込んだそこを、美樹はゆっくりと押し広げる。くぱぁと物欲しげに広がるそこに、自らの陰茎を宛がうと、紅が期待に満ちた声を漏らした。 「あ、はやく……ん、あ、ああああ~~~~っ」 「もうっ、えっちになって……っ」 「ん、あっあっ、ああ、あん、ソコ、あっあ、あ、ああ~~~~」 ズプンと奥まで一気に挿入された陰茎にごりっと奥を潰されて、喉をのけぞらせながら喘ぐ。ごりゅっと前立腺を押し潰されて、淫らに感じる紅に、美樹はゾクリとした感覚を味わう。 日に日に、紅のエロさが増していく。このままいけば、最終的にはどうなってしまうのか、美樹はその日が恐ろしくも楽しみとさえ感じた。 紅のナカが痙攣してきゅうっと締まる。美樹も息を詰めて、中に出した。はあ、はあ、と荒く息をする紅に、軽くキスをして、もう一回だと笑うと、その赤い瞳がにこりと笑った。 「やだ。ぐりんぴすちらい」 「俺も! 俺もグリンピース嫌い! じいじ食べて!」  翌朝、ぐだぐだになった浴衣を整えもしないで蘭の間に訪れた美樹と紅の目に、好き嫌いをして奈々子に叱られる我が子の姿が飛び込んだ。甘い甘いと思っていた奈々子たちだが、二人が夜の営みに耽って朝起きるのが遅くなると、きちんと躾も込みで面倒を見れくれると言うのを、二人は初めて知った。 「あら、朝からお熱いのね、お二人さん」 奈々子がクスクスと笑って、雪にグリンピースを食べさせる。うえっと吐き出した我が子は、ママと紅の方を向いて泣き出した。 「こら、ちゃんと食べなさい! ママは今日は休業よ! ばあばが任されてんだからね!」 「えーん、ママー!」 騒がしい食卓を見て、美樹と紅は顔を見合わせる。なんだがとってもおかしくなって、二人して笑ってしまった。 右京一家、温泉へ行く 終

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