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(ちょい*)第2話

コンコン 「失礼します」 「だからまだ入っていいって言ってないでしょうがーーー!!」 あの後、家族にも婚約の件の許可を貰い、妹ピには······キラワレタ············が、泣きそうなのでそれはさておき、正式な契約を結びに殿下が部屋に来たのだった。 「でもって、契約って何すんの?」 「貴方······何も知らないのですか?」 「へ?書類にサインするとか······?」 「それは保護者がやりますから。私達がするのは『契約のキス』です」 思わずキョトンとする。 契約のキス······?俺が?殿下と?男と? 「嫌だぁあああーーー!!!」 「はは、私だって嫌ですよ」 いや笑顔でそんな事ハッキリ言うなや傷付くだろ!? 「狂ってる······!この国狂ってるよ!俺らまだ齢(10)なんですけど!?」 「仕方ありませんよ、婚約者同士は何かと義務がつきものですから」 「······マジで?」 「クス······本当に何も知らなかったのですね(笑)」 つか、なんでお前はちょっと楽しそうなんだよ!?いや、逆に何かを悟ったのか······?俺の中身は前世の分含めて大人だけど、コイツは(10)のはずなのに何この落ち着きよう!? でも、ここは大人の俺がリードしないとダメだよな······?流石に齢(10)にしてこの現実は可哀想だし······。 「じゃあ、さっさとするぞ。そして記憶を消すぞ」 「······ふーん、私をこんな目に合わせたクセにまだそんな減らず口言えるんですね?」 「違う!お前はまだ子供で可哀想だから俺がリードしなきゃって······」 「同い年ですけど?」 「そうだけど······ちょ、殿下?」 ぎし、とベッドにのし上がり押し倒される。 え?え?なんで俺下にいんの?なんか、恥ずかしいんだけど??? 「私をリードするなんて百年早いってこと、その身体に教えて差し上げますよ?」 「う······うわぁあああ!!やめろぉおおお!?!?!」 ちゅ ······ん?唇が軽く触れただけ······? 「終わりましたよ」 「お、おう······」 やっぱ(10)だったわ······。そうだよな、大人のキスなんて知らないよな······。 「どうですか?今どんな気持ちですか?」 「ブフッ!こんなキスくらい大した事ないっての!ははは!!」 「······変態さんであせられましたか。これは私の手には負えませんね」 「ちげーよ!お前がまだ子供なんだって安心したの!」 「······では、子供でないキスってどういうものなのですか?」 え?··················やれと? 「いや······もう契約は終わっただろ?」 「是非ご教授願いたいです」 そんなニコニコされても······。でもこいつやっぱ腹立つし、ちょっと困らせてみる? 俺は状態を起こし、するりと皇子と指を絡める。こういった経験がないからか、皇子は一瞬ビクッとした。 ······へぇ?これはちょっと気分いいかも。 皇子を見上げながら顔を近づけ、触れる。 ちゅ······ちゅ······ 「ふ······」 「(戸惑ってる戸惑ってる!♪)」 角度を変えて唇を喰む。時折ペロっと唇を舐めれば、皇子の体が震えた。 やっぱ子供だな。でも、俺はまだ満足してないけど。生意気なその態度、ドロドロに溶かしてやる。 レロ······ 「っ······ん!?」 「ん〜?」 皇子の顔が真っ赤になってるのが分かる。そりゃ、こんな快感初めてだもんね?舌も口内も舐められるなんて思ってなかったでしょ? 勝った······!!! 「ぷはっ······はぁ······」 「はぁ······ふふ、どうだ?これが本当のキスってやつだよ!」 「っ······!///」 あ、なんか今になって俺子供にトンデモないことやらかしたかもって罪悪感でてきたぁ······。いやでもこいつが悪いんだよ!いっつもバカにするから!俺は悪くない! グッ······ 「······へ?」 なんで······手首掴まれてんの? なんで······押し倒されてんの? 「······なるほど。ご教授ありがとうございます。ミュール先生」 「でんっ······ん!?」 ぢゅ······ 待て待て待て!!何回キスするつもりだ!?つか、今ので学んだの!?嘘だろ!?こいつっ······めちゃくちゃキス上手いじゃねぇか!?!?! 「ふっ······」 「んっ······は······でん······んんん!?///」 ビクンビクンと身体が跳ねる。いつの間にか手が後頭部と背中にまわされ、逃げ場を無くされていた。 涙眼をうっすらと開けると、じっとこちらを刺すように見続ける碧い瞳があった。思わず瞳孔が揺れる。 前言撤回。こいつに罪悪感なんて一生持たなくていい。やっぱヒーローって半端ないわ。 ぢゅぷぢゅぷと口内を弄ばれ頭がふわふわする。つーっと唾液が口端から垂れた。 ヤバい······これ、腰砕ける······。 も······むり······。 「ぷ、はぁ······どうでした?」 「はぁ······はぁ······はぁ······」 「クス······喋る事もままなりませんか?」 「はぁ······はぁ······殿下······」 「はい?」 「キス······上手すぎ······」 「······」 「なんで······も、俺っ······どうにかなるかと思った······」 「······」 「はぁ······う〜!悔しいよぅ〜!!」 「ちょ、泣かないで下さいっ!?」 「うえ〜〜〜ん!!」 俺はただ押しピを守りたかっただけなのになんでこんな目に合わなきゃいけないの? 押しピにも嫌われて、野郎には腰抜けるキスされて、情けない······。 「ーーーっ······私も調子にのりすぎました。すみません。もう泣き止んで下さい」 両手で頬を包まれる。 ······意外と心地良い。暖かい。 「······俺も調子のった、ごめん殿下」 「カイル=クリスフォードです。カイルと呼んでください」 「······うん。カイル············」 「っ······はぁ〜······」 カイルは何故か片手で顔を覆っている。 とりあえず、契約は結べたから問題は無い。あとは帰ってもらうだけだし······。 でも、何でだろう。なんか、帰って欲しくない······? って、何考えてんの!?相手は男だろ!? 俺はメロたんを守るために偽の婚約者を演じるだけ!そこには何も深い意味は無い!断じてない!!! 「本当はもう少し色々聞くつもりでしたが······これ以上長引くとご両親が心配するでしょう」 「あ······うん」 「帰って欲しくありませんでした?」 「なっ!?は、はよ帰れ!!」 「クス······ではまたお伺いします」 「······分かった」 バタン、と扉が締められる。 嵐が過ぎ去ったようだ······。まさかあんな展開になるなんて······。 今でもカイルの唇の感触が残ってる。熱い、熱い······。 「だあああ!もうヤメヤメ!!」 「キャ!お兄様!?」 「おおお押しピ!?」 いつの間に部屋に来てたんだ!?というか······かっわいいなぁ〜!はぁ〜癒されるぅ〜! 「押し······なんですの?」 「ああっ!いや、何でもないよ?ところでどうして部屋に来たの?」 「ワタクシ······殿下と婚約したお兄様を恨んでしまいましたの。ごめんなさい、ワタクシを庇って怪我をするくらいワタクシのことを大事に思って下さっているのに······」 「メロちゃん······」 天使。突如として、いや、必然的にその言葉が頭に舞い降りた。好意を寄せている男性を結果的に奪ってしまったにも関わらず、わざわざ部屋まで謝罪しに来てくれる純粋な心。ああっ!推しピが可愛い!推しピhshs!生まれてきてくれてありがとう!推しピに出会えた全てに、感謝ーーー!! 「あの······お兄様?」 「ああ!いや、こちらこそ急な話で決まった婚約だったから······ごめんね」 自分から婚約を願い出たなんて死んでも言えねぇ······(汗) 「そうですわよねっ······その······契約のキスも済ませたのでしょう?」 「あはは、早く口洗わないとーー」 「口······?」 あっれ〜?推しピなんか黒いオーラが······。 「お兄様······契約のキスは顔ならどこでも構いませんのよ······」 「······つまり、ほっぺや額でも良かったってこと······?」 「······そう、その反応だと知らなかったのね······つまり殿下は意図的にお兄様の口にキスをしたってことですわ······」 「なっ!?///」 あ、あいつ〜〜〜!?!?!そんなに俺の事困らせたかったのか!? 「そう······殿下はお兄様に本気でしたのね······」 「あ······妹ピ······」 いや、困らせようとしただけだから!? メロちゃんは目に涙を溜めてキッとこちらを睨んだ。 「妹ピってなんですの!柿ピみたいで腹が立ちますわ!そうやってワタクシをバカにしないで下さいまし!」 「ち、違うんだ!メロちゃんっ!」 「ごめんなさい······こんなの八つ当たりだって分かってますわ······。お兄様達のこと応援致します。でも、当分一人にして下さいまし······」 「そ、そんっそそそ、そん、そそそっ、そんなあああ!?!?!」 死んだ。今度こそ推しピに嫌われた。 せめてメロちゃんの為に買ったこの小説だけでも渡しとこう······。 「······ごめんね。これ、メロちゃん小説好きでしょ······?俺小説にはあまり詳しくないけどメロちゃんが好きそうだなって買ったやつ······良かったら貰ってくれる······?」 「っ······。えぇ、ありがとうお兄様······それでは······」 ああ······メロちゃん······。俺、絶対カイルとは何ともならないから······ごめんね······。 ーーーーーー 「はぁ······ワタクシったらお兄様にあんな事を······最低ですわ」 自室でカモミールティーを飲みながらそう呟く。 殿下とすれ違った時、どうしようも無く惹かれてしまった。まるでそうなるように仕組まれていたように······。 それに、自分がこんなに嫉妬深いなんてことも知らなかった。このままお兄様を嫌っていたくない······ただ一人の大事な兄様ですもの。何か、何か対策をしなければ······。 「そういえば、この本頂いたのよね······」 タイトルは『騎士と殿下の禁断の恋』ですって?ワタクシの好みツイてますわ······流石お兄様······。 なになに······?僕は男なのに殿下に恋をーー 「ってこれBLやないかい!!」 ハッ!?な、なんですのワタクシったら、はしたなく本を地面に叩きつけたりして······。ってそれより、『BL』ってなんですの······?どうしてワタクシは知らない単語を······。 とにかく、もう少し小説の内容を確認すれば何か分かるかも······? もう少し······。 そろそろやめ、いやもう少し······。 「萌え······」 ハッーー!?ワタクシったらまた知らない単語を······!? 「いえ、意味が分かる······萌え、この本はBLは萌えなのですわ!!」 何これ······最高なんですけど。一瞬で読み終わってしまったわ。どうしましょう完全にBLにハマってしまったわ······でもこの手の本は中々売られていない······。耐えられない!!!!!自分で書こうかしら?でも題材が······まって、身近に適任者がいるじゃない! 良かった。これでお兄様を嫌わなくてすむ。むしろ今は心の底から応援してるわ。 ワタクシお兄様達を推しますわ!!! ーーーーーー 「あれ······なんか寒気が」 推しピの身に何か起きた······!?ってはは、ただの寒気かっ!(笑)

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