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頭がぼうっとする。
目が開かない。
どうしよう、黒江くんをもっとずっと感じたいのに、すっごく眠い。
目が覚めたら、黒江くんがいなかったらどうしよう。
淫らな僕の身体だけが目当てで、本当は七瀬くんが好きなんだって言われちゃったら?
でも、そうだよね。
僕ってドジだし何も役に立てないし……。
先生にも悪戯されたんだ。
僕の身体、モンスターに催淫剤を注がれてからおかしくなっちゃったんだ。
黒江くんも先生みたいに僕をただ抱きたいって思っただけなのかもしれない。
そう思うと、好きだと言われて幸せだった胸が張り裂けそうに痛み出す。
苦しくて丸まったら――。
「……おい、お前。また何か勘違いしてないか? 念のために言っておくけどな、好きだよ、一色」
「っ……!」
僕を後ろから抱き締めながら、黒江くんはそう言った。
背中から回った腕の力がずっと強くなる。
だから嘘じゃないのかもしれない。
好きって言ったのは僕を抱くための口実じゃなくって、本当のことなのかな。
……黒江くん。
ああ、夢みたいだ。
どうしよう、幸せすぎて涙が止まらない。
神様、どうか僕が目覚めた時、これが夢じゃありませんように。
僕は大好きなその人の腕に身を委ねた。
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