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第1話

『ふたりは見つめ合い、笑顔を交わして生まれた街を離れた。新しい世界を求めて旅立つふたりの行方を知る者はいない』 ようやく完成した原稿。 僕はホッと胸を撫で下ろす。 5年間月間で連載していた恋愛小説。 通しで読んで誤字脱字を確認すると、出版社にメールで送付した。 「はぁ……」 窓の外を見ると、桜が咲いていた。 「今年も桜はひとりで見るのかな……」 こんな時間を、あと何年過ごすのだろう。 今年でもう、150年。 僕はまだ死ねずに生きながらえていた。 逢いたい。 僕に呪いをかけた最愛の君に。

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